こうした枠組みの変更には、官邸だけでなく、与党や財務省との折衝も必要になってくる。中原氏は「新総裁は、大きな枠組みの転換を構想し、やれるのかどうか」「安倍首相が3期目の任期いっぱいやったとしても、次の日銀総裁はさらに2年近く、任期が残っている。唯一のサポート役の首相がいなくなった時に、誰が本田総裁を支えるのか」といった懸念も示す。

 本田・駐スイス大使は、財務省出身とはいえ、在外公館や国際機関での勤務が長く、退官時は大臣官房の審議官だった。これまで日銀総裁になった財務省OBがいずれも次官や財務官経験者だったのに比べると、日銀という大組織を切り盛りし、さらには与党や霞が関、経済界との人脈を駆使し、政策を進める力量、経験に物足りなさがあるということなのだろうか。

「本田さんよりはまし」と
浮上する黒田総裁再任説

 こうした中で、「本田総裁」の可能性が囁かれるほど、逆に「黒田総裁再任説」が浮上することにもなっている。

 誰が総裁になっても、難しい舵取りを迫られる状況で、「これまでの議論や政策の流れがわかっている黒田総裁の続投が無難」と、市場関係者は言う。

 首相や菅官房長官らの信認が厚いうえに、日銀内からも、就任直後のアレルギー反応のようなものは表向き少なくなった。

「安定感はあるし、国会答弁や記者会見も安心できる。出口戦略もまったくノーという感じではない」

 ある財務省OBも、「本田さんよりは、黒田総裁再任の方がましだ。続投要請を受けたら、首相に、異次元緩和の路線修正を言って、それを条件に続投するというのが一番いいのだが」と、本音をもらす。

 一方で、ポスト黒田で名前が上がる日銀OBの一人は、「いまの状況では、後任を引き受けても、尻拭いが大変なだけ。ここまで金融政策を無茶苦茶にしたのだから、そこは責任をもって正常化してほしい」と語る。

 黒田総裁が再任された場合、副総裁人事はどうなるのか。これまでのように「財務省出身、日銀出身、学者」の組み合わせできた総裁、副総裁2人の「トロイカ体制」が続くとすれば、副総裁は雨宮正佳・日銀理事が昇格し、学者では元副財務官でもある伊藤隆俊・コロンビア大教授といった組み合わせが予想されている。