日本銀行が「異次元緩和」に踏み出して4年半余り。だが、いまだ「2%物価目標」は達成されないまま、金融は「マイナス金利」、財政も赤字が止まらない「財政と金融の同時破綻」とも言うべき状況だ。「アベノミクスのリスク」を一手に背負いながら超金融緩和をやめるにやめられないジレンマと不安に襲われている日銀の今を、8回シリーズで追った。
水面下で路線修正に動く
財務省と日銀
「メガバンク出身の鈴木さんが審議委員になったのは、ひとまずよかった。1人で何ができるかというわけではないが、政策委員会も少しは緩和縮小に向けての“出口”議論が行われるようになるんじゃないか」
7月下旬、日本銀行の金融政策を決める政策委員会の審議委員2人が交代した。そのうちの1人が、鈴木人司・元三菱東京UFJ銀行副頭取に決まった直後、財務省幹部は少しほっとしたような表情を浮かべながら、こうつぶやいた。
6人の審議委員のうち、任期を迎え交代する2人は、黒田東彦総裁就任後の「異次元緩和」に異を唱え、慎重姿勢を取り続けていた。それだけに後任人事が注目されていた。