食品卸売市場の「ぬるま湯」にメス、規制撤廃で競争促進へ卸売業者がJAなど出荷団体にキャッシュバックする奨励金も旧弊の一つ。撤廃、削減が必要 Photo : Natsuki Sakai/Aflo

 政府は、野菜や水産物などを扱う中央卸売市場を規制する卸売市場法を廃止する方針を固めた。規制を撤廃することで中間流通業者の競争を促す。

 自民党など与党が例外的に温存する規制などを議論し、年内に意見をまとめる。卸売市場に関する法制度は、既存の食品流通構造改善促進法を改正して一本化する見通しだ。来年1月からの通常国会に同法の改正案などを提出する。

 現状の卸売市場のモノの流れは、出荷者、卸売、仲卸、小売・外食――の順になっており、卸が仲卸を飛ばして小売に売ったり、仲卸が出荷者から直接買い付けたりすることは規制されている。プレーヤーが互いの事業領域を侵さない“ぬるま湯”の環境と言える。

 ただ、この不可侵のルールは一部ですでに形骸化している。その上、卸売業者も仲卸業者も規制そのものが及ばない卸売市場の「場外」に子会社を設け、自由に取引しているのが現状だ。

 今回の改革の目的は、競争を制限される卸売市場の場内と、場外の垣根を取り払い、競争を促進。投資余力のある中間流通業者をつくり、業界を活性化することだ。

 改革が急務なのは、このままでは卸売市場が衰退するからだ。

 食品流通に占める卸売市場の存在感は大きく、卸売市場の取扱額は約7兆円に上る。だが、国産青果物の卸売市場経由率は、2003年度の93.2%から14年度の84.4%へと右肩下がりだ。

 これは出荷者と小売などの直接取引が増えたためだが、今後、卸売市場のシェア低下に拍車がかかりそうだ。新規参入企業がITによる需要予測に基づく契約取引などで取扱額を拡大しているからだ。

 既存の中間流通業者を襲う技術革新の波はこれにとどまらない。