「QE3」(第3次量的緩和政策)の可能性がにわかに高まっている。

 10月21日、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン副議長は、「米景気の回復は失望されるほど緩慢だ。雇用は、今後数ヵ月なお低迷する可能性が高い」と述べ、厳しい景気認識を示した。加えて、「さまざまな償還期限の証券購入が適切と見なされる可能性がある」とし、具体的な政策として「QE3」に言及した。翌週初めには、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が低迷する住宅のリスクを指摘し、「QE3の実施はありうる」と明言している。「イエレン=ダドリー・ライン」は、バーナンキ議長が率いるFRB主流派のコアメンバーである。「QE3」の蓋然性は高まっているようだ。

 米国のコアCPI(消費者物価指数。エネルギー・食品を除く)は、9月でも前年同月比2%増とFRBの想定上限値に達した。常識的には、このインフレ率での「QE3」はありえない。しかし、イエレン副議長、ダドリー総裁共に、米経済のリスクは「インフレよりも雇用・住宅の低迷にある」という認識を表明した。

 その背景には、オバマ大統領の4470億ドルの景気刺激策が、事実上頓挫したことが挙げられる。大きく喧伝された景気刺激策は、共和党が富裕層の増税、バラマキ的公共投資に反対姿勢を貫き、成立の可能性はきわめて低い。このままでは、来年初以降に緊縮財政の逆風が直撃することになる。議会が機能不全となれば、FRBにボールが渡される。