実際、2016年の時点でロサンゼルス市警(LAPD)がテスラ・モデルSをパトカーとして採用する方針を検討していた。テスト的に導入し、うまくいけば17年中にモデルSパトカーが実現するはずだった。しかし1台が10万ドル(約1130万円)以上という価格と、EVのウイークポイントといえる航続走行距離の限度などがネックとなり、まだ実現していない。

 世界を見ると、ヨーロッパのルクセンブルクがすでにモデルSを購入し、パトカーとして使用している。このほかにも興味を示す国や自治体はあるものの、やはりチャージステーションの充実など多くの問題点が指摘されている。もしチャージ切れ寸前に犯罪者を追跡する事態になったら? パトカーが追跡途中で動かなくなった、ではシャレにならない。

“客寄せパンダ”か?
デンバー市がモデルSをパトカー採用

 それでもこうした欠点を乗り越えて、コロラド州デンバー市が全米で初めてモデルSのパトカー採用に踏みきった。内装をポリス用に改装し、ルーフにパトランプを装着したモデルSの写真が公開された。ただし、このテスラ・パトカー、残念ながら日常的な業務には使用しない予定だという。ならば何に使うのかというと、警察が定期的に行うコミュニティサービスの一環、ポリスショーに、ビンテージパトカーなどと並んで展示される予定という。つまり“見世物”“客寄せパンダ”だ。

 それでも、テスラにとってデンバー市が導入したモデルSパトカー・バージョンは大きな一歩といえる。デンバーは現在スマートシティ計画を進めており、ほかの都市に比べてEV導入機運が高まっている。市民の多くがモデルSパトカーを見れば、テスラ、つまりEVの認知度はいっそう高まる。またほかの都市、とくにロサンゼルスがこれをきっかけに本格的な導入に踏みきる可能性もある。

 テスラは現在、ロサンゼルスで都市型充電ステーションの設置を進めている。ハイウェイなどに設置される通常の充電ステーションとは異なり、コンセプトは「フルの充電を目指さない」というものだ。たとえばユーザーがテスラを通勤用に利用するとして、フル充電で200マイル(約320km)以上の走行能力があるモデルSなら、ふだんの通勤にはまったく問題がない。充電のし忘れ、あるいは仕事中にちょっと充電して安心したい、という需要のために都市に低エネルギーの充電ステーションを設置し、気軽に利用できるようにする、というものだ。

 こうした都市型の充電設備が充実すればテスラ・パトカーは十分に活用できそうだ。強力な加速性能が魅力のEVパトカー時代は意外に早くやってくるかも。

(報告/土方細秩子、まとめ/CAR and DRIVER編集部)