フィンテックの本質とは「金融の主体」が変わることにあるフィンテックのインパクトはまだまだこれからだといわれている。「種の爆発」を控えている状況だ

 最近よく耳にする「FinTech(フィンテック)」という言葉だが、その本質は意外によく分からない。

 今から20年ほど前、米国で初めてATM(現金自動預払機)を開発したという人物にお会いする機会があった。

 私は「世の中を変える製品を開発されたのはすごいですね!」と称賛したが、彼は「いいえ」と首を横に振った。その理由に私は言葉を失った。

「確かに私の開発したATMの普及によって現金の利用は便利になりました。ですが、そのせいで、本当の意味での金融のデジタル革新を遅らせてしまったのです。金融の根幹は全てデジタル情報ですから、そもそも現金は要らないのです」

 これが、フィンテックを理解する上で重要なメッセージだ。

 金融は、デジタル情報で成り立っている。フィンテックとは、デジタル情報により表現される金融(Finance)を情報技術(Information Technology、IT)により刷新し、人間の経済活動を再編成する進化過程なのだ。故に「Fin+Tech」なのだ。

 送金・決済あるいは家計簿サービスのような個々のアプリケーションばかりに目を奪われていては、フィンテックの本当のインパクトを理解できないだろう。

 フィンテックは、経済活動の仕組みそのものを変えるイノベーションである。実は、大きなインパクトが来るのはこれからだ。いうなれば今は、まだ見ぬ夢に思いをはせている時期である。