
校條 浩
最終回
5年近く続けてきた本連載は、今回が最終回となる。連載の目的は、テクノロジー企業を紹介することではなく、「シリコンバレーの流儀」という“眼鏡”を通して日本を見直し、本質的な課題に迫ることだった。新しい視点と切り口で何らかの示唆が提供できたとすれば、それは望外の喜びだ。

第106回
日本が過去30年間、経済力を停滞させたままでいるのはなぜか。本連載で度々指摘してきたように、企業経営の“巡航速度”を維持するために適した帰納法的経営から、ビジネスモデルなどを方向転換するときに必要な演繹法的経営への転換ができていないからである。

第105回
米国の住宅に革命を起こすべく、建築と居住性における独自のデザインに、スマートホーム技術を融合し、「住宅のテスラ」を目指している日本人がいる。2008年からシリコンバレーに住む本間毅氏だ。本間氏が創業したHOMMAは、先日15億円の資金調達に成功し、創業してから通算35億円の資金を集めている。

第104回
日本企業がデジタル化に対応できずに停滞している最大の原因は、帰納法的経営と演繹法的経営の違いを理解していないことだ。帰納法的経営は、経験や知識を基に計画し、実行する経営だ。ほとんどの既存事業は、帰納法的に経営されているといってよい。欠点は、新しい事業創造や事業革新に無力なところだ。

第103回
約30年前から始まった「デジタル革命」により企業環境が大きく変化した。だが、多くの日本企業はいまだに対応できず、停滞している。この間、企業経営者から現場の社員に至るまで、新しい事業経営に関してよく勉強してきたはずだ。それなのに、なぜこの停滞から脱却できないのか。そのヒントが、『世界標準の経営理論』(入山章栄著)で著者が主張する、「理論ドリブンの思考」にあった。

第102回
最近、日本企業がオープンイノベーションに真剣に取り組む兆しがある。あらゆる業種・業界でデジタル化が進行する中で、既存企業の敵は競合企業ではなく、新興企業だと気付いたのだろう。例えば銀行にとっては、他の銀行が敵ではなく、フィンテック(新しい金融技術)が包含されたさまざまなサービスの出現が脅威となってくる。

第101回
産業の新陳代謝では、スタートアップ企業の興隆が大きな役割を果たす。そういう意味で、シリコンバレーの成長は産業の新陳代謝にとっていいことだ。シリコンバレーの変化でむしろ注目すべきは、成功者の若年化だ。スタートアップ企業を成功させた20歳代から40歳代までの若い億万長者が急増しているのだ。

#6
米シリコンバレーを拠点に、世界中のベンチャービジネスや起業家に関わり、その隆盛を間近で見てきた校條浩氏。5人の識者との議論で見えてきた日本企業の病巣とその克服の鍵、今後必要な人材の流儀について探る。

#5
17歳でインドから米国に移住したシュルティ・ガンディ氏。エンジニア出身の女性ベンチャーキャピタリストとして、今、シリコンバレーで注目の存在だ。そんなガンディ氏に、世界から起業家が集まり、厳しい競争が繰り広げられているシリコンバレーで勝ち残る極意を聞いた。現在の日本の産業界で、世界を驚かすようなイノベーションが起こらない現実をどう見ているのだろうか。

#4
大手保険グループのMS&ADインシュアランスグループホールディングスが、米シリコンバレーに進出して4年。縁もゆかりもなく、ベンチャー企業に投資した経験も乏しかった同社は、今では現地からも一目置かれる存在になっている。グローバル時代で勝つべく海外へ目を向け、早期にシリコンバレーに足掛かりをつくることに成功した同社の背景には何があるのか。進出当時、グループCFOとして社内変革のきっかけをつくった藤井史朗・三井住友海上プライマリー生命保険取締役会長に話を聞いた。

#3
教育改革実践家として、日本の教育制度や教育の在り方について発信を続けながら、現在は「朝礼だけの学校」校長である藤原和博氏。元リクルート社フェローとして活躍した後、東京都杉並区立和田中学校や奈良県奈良市立一条高校の民間校長を務めたことでも有名だ。その藤原氏に、イノベーションが起こらず30年間変わらない日本の産業界の抱える問題と、そんな現状を打破する人材はどのように育成すればいいのかについて、話を聞いた。

#2
ディープテックと呼ばれる基本技術の開発に投資し、事業創造を目指すUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)。共同創業者である郷治友孝氏に世界で戦える起業家やビジネスパーソンが少ない日本の現状とこうした現状を打破するような人物像をどのように考えているのだろうか。

#1
日本企業は業界や業種、規模の大小にかかわらず、グローバル市場で世界の企業を相手に戦わなくてはならないが、躍動する米中企業と比較してその存在感は薄い。『世界標準の経営理論』を刊行し、今日本で最も注目されている経営学者、入山章栄・早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授は、そんな日本の企業をどう見ているのか。グローバル時代に勝つ企業と人材の流儀を議論していく。

第100回
経営コンサルティングでは「時刻を教えるのではなく、時計の読み方を教えることが重要だ」といわれる。時刻とはすなわち「答え」だ。日本企業は、他人に時刻を聞く、つまり答えを聞く姿勢が強いように思う。私はこれこそがここ20年間、日本が産業転換や新産業の創造をできずに停滞している根本原因だと考えている。

第99回
在外邦人が今の日本を外から見ていて持つ共通の認識は、若い世代が日本を引っ張らないといけないということだ。しかし、若者世代が奮起し、これからの日本を引っ張っていこうという、うねりが起こるような気配はない。

第98回
日本企業の間で、ベンチャーキャピタル(VC)への出資がブームとなりつつある。シリコンバレーには日本企業が続々と進出しており、その数は1000社を超えるという。以前から活動していたテクノロジー系の企業に加えて、あらゆる業種の企業がシリコンバレーに注目し始めていることがその理由だ。進出した日本企業は、駐在員による情報収集だけでは不十分だと気付き、VCへの出資が増えているのである。

第97回
藤原和博氏の教育論は、日本企業に必要な演繹法人材の育成に、大いに参考になる。藤原氏は、リクルートから東京都杉並区立和田中学校の校長に就任し、民間人初の公立中学校校長として教育に新風を吹き込んだことで知られる。

第96回
日本はコロナ対策において、「戦時体制」に移行できていない。すぐにでも、経済への悪影響を最小限にし、さらに日本経済が飛躍するような戦略的な思考に転換すべきだ。そうでないと、先の世界大戦のインパール作戦や沖縄戦に至るような、産業の悲惨な敗戦と不必要な犠牲を繰り返すことになる。

第95回
先月行われた日米首脳会談を受けて「日本とシリコンバレーの関係を強化できないか」という相談が、在サンフランシスコ日本国総領事館の前田徹総領事からあった。シリコンバレーを舞台に活発に行われる事業創造や事業イノベーションを、日本の産業界が効果的に取り込めていないという積年の課題があり、前田総領事の問題意識は的を射ている。

第94回
日本では今、新型コロナウイルスの感染者が急増しており、大騒ぎだ。しかし、世界の国々が疫病流行と闘う“戦時体制”に移行した中で、日本は平時体制のままに見える。
