35歳までに「スペシャル」なものを持たないサラリーマンは「拘束されて電気ショックに耐えるだけの無力なイヌ」になる

作家であり、金融評論家、社会評論家と多彩な顔を持つ橘玲氏が自身の集大成ともいえる書籍『幸福の「資本」論』を発刊。よく語られるものの、実は非常にあいまいな概念だった「幸福な人生」について、“3つの資本”をキーとして定義づけ、「今の日本でいかに幸福に生きていくか?」を追求していく連載。今回は「日本的雇用と幸福の関係」について考える。

日本的雇用のメリットと末路

 日本的雇用にメリットがあるとすれば、真っ先に挙げるべきは、新卒一括採用によって若年層の失業率が低く抑えられていることでしょう。

 欧米の雇用制度では、会社の経営が思わしくなくなると、労働者の生活を守るために就業期間の短い若者からレイオフされていきます。

 経済成長によって解雇を上回る職を生み出せればこれで問題ありませんが、低成長が常態化すると若年層の失業率が上昇し、イタリアやスペインでは50%、フランスでも25%という驚くべき値になっています。いうまでもなく、多くの若者がなんの職業経験もなく年をとっていく社会は持続不可能です。

 それに対して日本は、人口減にともなう人手不足もあって、大学を出ればほぼ全員が就職できる恵まれた環境です。

 これが私が、「若いうちはサラリーマンを体験するのも悪くない」と考える理由です。日本では大学で職業教育が行なわれませんから、ほとんどの新入社員は自分の職業適性がわからないまま入社してきます。そんななかで、若手のうちにさまざまな仕事をやらせてみる日本型のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)はじつは「自分探し」にとってかなり有効な方法になり得るのです。――もちろん最初からやりたいことが決まっていれば、ベンチャー企業や中小企業で技術や知識を磨く方がずっといいでしょう。

 問題なのは、日本的な会社の人事制度では、「適職」を見つけたとしても不得手な部門や関係のない仕事に異動させられることです。これではいつまでたってもプロフェッショナルにはなれず、ライバルとの差は開くばかりです。