「自分も、もっと数字に強ければ…」
日々の買い物や職場で「数字コンプレックス」を感じたことはないだろうか。「算数や数学は大キライ…」「できるだけ見たくない…」中には「数字はもう諦めた」という人もいるだろう。
しかし実は、「数字に強い」は生まれつきの才能ではない。数字に強い人は、無意識のうちに九九などの「頭を使わないラクな計算」を使って、面倒な計算をうまくサボっているのだ。
新刊『「数字がこわい」がなくなる本』は、数字に強い人の脳内を解明した一冊。数字に強い人が無意識にやっている「頭を使わないサボり計算テク」を知れる本書の中から、今回は「数字のとらえ方」について紹介したい。

「理数系が苦手な子どもは、もう伸びませんか?」→専門家が「そんなことはない!」と断言する衝撃の理由Photo: Adobe Stock

「正確な計算」ができることは、本当に重要?

「九九が言える」「掛け算や割り算ができる」――いまだに計算方法だけを教える教育が大切だと信じている親は少なくありません。

実際、計算方法や手順そのものを重視する教育は、かつては確かに価値がありました。学校でよい点数を取れ、先生から褒められました。しかし、本当にこの技術は、必要なものなのでしょうか? 今回はこれについて、考えてみましょう。

私たちの生活は大きく変わりました。スマホを持つのが当たり前となり、AI(人工知能)や生成AIの登場によって、複雑な計算さえも数秒で簡単に解ける時代となりました。今やスマホに「6×53÷27は?」と問いかければ、一瞬で正確な答えが返ってきます。近い将来、AIは単なる計算にとどまらず、「こんな状況ではどのように考えればよいか?」という高度な判断までも瞬時に提供してくれるようになるでしょう。

つまり、計算方法ができて、先生から褒められれば、必ず将来役立つ人になれる、という確証はない時代に突入しているのです。

「0.2×0.5」の意味、説明できますか?

そこで大切にしたいのが、「その計算はどういう意味なのか?」を一歩立ち止まることです。

「2×3」とは、2が3個分と、ほとんどの人が答えられますね。では「0.2×0.5」とはどういう意味でしょうか? 「0.2×0.5=1」と答えが記載されていたとき、パッとその間違いに気づけますか?

計算の意味を考えてみます。このときは、「0.2が0.5個分あるということは、「0.2が半分」。つまり、答えは0.1になるはず」が正しい意味です。

計算の意味に「きづく」力、これがあれば、間違いに気づけます。

AI時代だからこそ、「計算の“意味”」を考える

計算方法を暗記するだけの教育では、AIが持つ圧倒的なスピードや正確性に敵いません。つまり、計算手順を丸暗記するだけの教育は、AIに取って代わられる運命にあります。

だからこそ、計算の「意味」を捉えるのです。計算の意味を捉えれば、計算を現実に応用できる力が育まれ、子どもはどんどん伸びていきます。

お子さんが「計算」を学ぶとき、ぜひ「やり方」ではなく、「その計算の意味」を一緒に考える時間を作ってみてください。なぜその答えになったのかを言語化してみてください。計算の意味に「きづく」。それこそが、AI時代に負けない“本当の力”を育むための確かな第一歩になるのです。

(本記事は『「数字がこわい」がなくなる本』に関する書き下ろし原稿です)