「一体どこまで踏み込んでくるつもりなんでしょうね」
銀行をはじめとした金融機関がそう警戒し、身構えていた金融庁の行政方針が11月中旬にようやく公表された。
行政方針は、金融庁が金融機関の経営状況をチェックするにあたって、どのような問題意識を持ち、1年を通じて何を重点的に調べていくのかを示すものだ。
例年9月までに公表しているものの、今年は10月になっても一向に方針が示されなかった。
そのため、森信親長官が「在任3年目の総仕上げとして、強烈に改革を促すような方針を練り上げているのでは」と金融機関がざわつき、警戒感が日を追うごとに強まっていた。
しかし、いざふたを開けてみると、例年より1ヵ月も公表が遅れたわりには、目新しさはほとんどなく、昨年の行政方針の延長線上にある内容が大半だった。
目立ったのは森長官がメインターゲットに据える地方の銀行に、改めて経営改革を強く迫る文言ぐらいで、特段のサプライズもないことから、方針発表翌日のメディアの扱いも自ずと小さかった。
身構えていた分、肩すかしを食らった格好の金融機関が多かった一方で、実は新たな行政方針に浮かない顔をしている業界がある。保険業界だ。
一体何が保険会社を憂鬱にさせているのか。それは、保険会社は事業構造そのものに問題を抱えているのではないかという指摘を金融庁がしてきたことだ。