マイナーチェンジがない!
マツダのユニーク開発思想

 日本に戻った猿渡は、今春からエンジニアたちを引き連れて全国行脚をしている。安全装備に対する正しい理解を、顧客や販売店の営業マンに直接促すためだ。

 マツダの商品開発に対する考え方はユニークだ。モデル発売後でも商品改良を適宜行い、準備できた技術から主要車種に一気に横展開していくのがマツダ流。要するに、今のマツダには「マイナーチェンジ」が存在しない。

 実は、「デミオ」にアイ・アクティブセンスが初めて標準搭載されたのは4月のこと。わずか8カ月で機能が大幅にパワーアップして、再デビューするのだ。

 通常ならば、フルモデルチェンジやマイナーチェンジに合わせて、車種ごとに開発スケジュールを組めばいいが、マツダの開発にデッドラインはない。というよりも、常にデッドラインが前倒しされてやって来る。感覚的には、1年に1度は大幅な品質改良がされているイメージで、マツダの開発スピードには競合他社すら舌を巻く。

 特に、安全装備の標準化では、「デミオ」のような小さな車ほど開発が難しい。「装備を積めるスペースが小さく、コストの制約も大きかった」という。それでも、「ドライバーの特性を最大限に引き出す支援をしたい」。ユーザー視点に立つことで必ず解が導かれるというのが猿渡の考え方だ。

 デッドラインがないマツダの開発のように、猿渡の仕掛け人としての奮闘の日々も続きそうだ。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

【開発メモ】360°ビュー・モニター

 ドライバーから見えない、死角になっている領域をモニターで確認できる。高感度カメラでキャッチされた「前後」「左右」「俯瞰」の映像がただディスプレーに映るだけではなく、その映像をドライバーが直感的に理解できるように、「人間にとって自然な見え方」にこだわっている。この直感的な理解が結果的にリスク回避につながる。