外観も一般的なファミリーマートとは一線を画しており、一見コンビニとは気付かないほど。

 大人の嗜好を研究し、ライフスタイルに合わせた提案を行なう、ファミリーマートの「おとなコンビニ研究所」。2010年9月に発足したこの組織は、50~65歳の顧客にフォーカスし、大人の好奇心をくすぐる商品の開発・販売を行なっている。この世代は成熟した審美眼を持ち、消費意欲も高いとされているが、この層をメインターゲットとしたプレミアムな商品を日夜開発しているのだ。

 そして11月25日、おとなコンビニ研究所の旗艦店として、「ファミリーマート代官山店」がオープンした。ロケーションは、東京都内で最も洗練されたエリアの1つ、代官山。そのなかでも、シックで高級感溢れる「代官山T-SITE 蔦谷書店」1号館1階にある。

 店舗インテリアは、クラス感(高級感や豪華という意味ではなく、相対的に上質感がある「ワンランク上」という意味)のあるシックなムードで統一。ムク材の床や壁、商品棚、カウンターなど、濃い目のブラウンを基調にし、照明も柔らかく、優しい雰囲気だ。

 筆者も実際に足を運んだが、何度でも立ち寄りたくなるような落ち着いた空間であった。訪れている客層も、心なしか年齢層が高めで、なおかつお洒落なたたずまいの人が多いように感じられた。

 このように、生活感度の高い顧客を意識して、品揃えにも当然工夫を凝らしている。おとなコンビニ研究所では、(1)既存の商品カテゴリーのブラッシュアップ、(2)“おとな”の好奇心・消費意欲をくすぐる品揃え、の2点をコンセプトとした。

 その結果、全アイテム約2600種類のうち、約700種類は通常のファミリーマートにはない大人向けの商品を取り扱うことになった。たとえば、手作りチルドデザートの「スペシャリテ・宇治」(400円)や、フローズンチルドタイプのデザート「ウーピーパイ ブルーベリークリームチーズ」(250円)などがそうだ。

 さらには、国産原料にこだわった生ハムや、有機食材使用の各種調味料、各国のワイン57種類、無添加石鹸、エイジングやオーガニックにこだわったスキンケア商品などのラインナップでも、プレミアム感の創出を意識している。

 また、「MOTTAINAI」オリジナル商品約40種類を揃え、売り上げの一部をケニアの植林活動に役立てるほか、紅茶やチョコレートなどのフェアトレード商品約20種類を置き、途上国支援につなげる活動も行なう。

 この世代は、社会貢献意欲も高いとされる。そんな大人心をくすぐるコンビニの出現は、とりもなおさず都市に住む消費者の成熟度の高さを示しているようだ。今年創立30周年を迎えたというファミリーマートの「新たな挑戦」は、非常に興味深い。

(田島 薫/5時から作家塾(R)