思いどおりにいかない就職活動……。
困ったときに頼れる友達がいない……。
なりたい自分っていったい……?
歳を重ねるにつれて、社会への漠然とした不安から、明るい未来・将来像を思い描けない若者が増えている。そんなときに話を聞いてくれたり、厳しい言葉を投げかけたりしてくれる大人がいれば……。
11月15日、東京池袋の生涯学習施設「みらい館大明」(旧:大明小学校)で『おとな大学』が開校した。各分野で活躍する“おとな”たちが講師となり、迷える若者たちへ様々な生き方の可能性を提示する、新たな形態の若者支援事業だ。
「対象は“学びたい若者”。企業に就職すると言っても、様々な働き方があることや、大人ならではの楽しみ方などを、悩みながらも創意工夫をして社会に生きる人たちから学ぶ場です」(おとな大学 ディレクター 山本絵美さん)
おとな大学は、自治体と特定非営利活動法人(NPO)の協働事業だ。街の文化資源を活かした取り組みに積極的な「豊島区」と、地域で学ぶ場所の提供に実績がある「NPO法人いけぶくろ大明」、大学・短大・専門学校の中退者予防支援などで蓄積した若者支援のソフト面を提供する「NPO法人NEWVERY」が運営にあたる。
「精神科医のフロイトの言葉から、『働くこと』と『愛すること』をテーマに掲げています。「社会とのつながり」と「人とのつながり」を意味するこれらは、大人になる上でとても重要な要素だと考えています」(同上)
開校以来、「作品の魅力を120%伝える方法」(ローゼン美沙子さん:アートギャラリー経営)、「ベンチャー企業から古民家付き貸し農園運営へ」(峯岸祐高さん:農家民宿運営)などの講座が開かれた。現在は単発のゼミが多いが、「アートを仕事にする!ゼミ」や「仕事人の現場ゼミ シリーズ NPOで働く」など、その都度テーマを設けて講師に依頼する。「今後は講師の公募も視野に入れている」という。
今の時代、環境の変化に対応できず、ふとした“段差”でつまずいてしまう若者が非常に多い。周りに相談できる相手がいないと、彼らは自分1人で判断してしまい、選択肢を狭めて居場所をなくすという悪循環に陥る。そんなとき、おとな大学に来れば、自分とは違う学びや経験をしている人たちがいる。生きていく上でのヒントがもらえる。普段なら出会えない相手とのつながりを作ることができる。
「社会と若者をつなぐ場でありたいですね。たとえば、超氷河期といわれる昨今の就職活動では、希望通りに就職できることは少ない。でも本来、働き方というのは何通りもあります。ある1つの価値観に煽られ、考え方が窮屈になり、そのことに違和感はあるけれど、具体的にどうしたらいいかわからない。そんな若者が増えていると感じています。色々な可能性があることを、おとな大学で知ってもらえたら嬉しいです」(同上)
2013年には、いけぶくろ大明内の図書室を使って、古本の漫画や書籍を扱うブックカフェをオープンする予定。おとな大学のゼミや講義を行ないつつ、若者たちが気軽に立ち寄ることができる場所として活用する。
(筒井健二/5時から作家塾(R))