『キレイなトイレから、キレイになれるトイレへ。』──これは、現在東京メトロが展開しているキャンペーン「トイレリニューアル」のメインコピーだ。
モデルとおぼしき女性が、駅構内のトイレからさっそうと出てくるポスターを目にしたことはないだろうか。一昔前まで「汚い」「暗い」といったイメージが強かった駅トイレを、女性利用客にも安心して利用してもらう狙いだという。
「営団地下鉄から東京メトロとなった2004年以降、通常の改良・補修だけでなく、光壁などの間接照明を取り入れ、実用性とデザイン性を兼ね備えたキレイで使いやすいトイレを展開しています。単純に用を足す場所ではなく、パウダールーム、フィッティングルームとしてご利用いただくなど、お客様の心がリフレッシュするような空間づくりを目指しております」(東京メトロ)
「トイレリニューアル」は、東京メトロを利用する全ての利用客の、安心・安全に関わる取り組みの1つ。多くの利用客から好意的な意見が届いており、「当社の姿勢や伝えたいメッセージをご理解いただいている」と担当者は胸を張る。
このように入りやすいトイレ、利用するのに抵抗感がないトイレには、お店や施設に利用客を呼びこむ力がある。
たとえばコンビニエンスストア。その昔、街のコンビニはトイレだけ貸すことに消極的なお店が多く、借りることができたとしても場所はバックヤードの奥の奥。店員にトイレを借りたい旨を伝えるのにも、勇気が必要だった。
コンビニチェーンの中で、いち早く“トイレの地位向上”に取り組んだのはローソンだ。「トイレだけでもお気軽にどうぞ」と呼びかけ、用を足すだけの来店客を喜んで受け入れた。筆者自身、運転中にもよおしたとき、何軒かのコンビニをスルーして、あえてローソンを選んだ経験がある。
こうした取り組みによって何が起きたか。快くトイレを貸してくれた“お礼”にと、用を足した後にちょっとした買い物をしていく人が増えたのだ。缶コーヒー1本、飴玉1つでも、総額にすれば決して小さくない金額が動く。
排泄行為が生理現象である以上、トイレは街行く人を呼びこむ優れた集客ツールだと言えないだろうか。どこでもよおすかわからないということは、いつ必要になるかわからないということ。潜在顧客とお店・施設をブリッジするのに、トイレを用いた集客マーケティングが期待される日が近いかも?
(筒井健二/5時から作家塾(R))