最近『日経ビジネス』誌(10月31日号)にオリンパス事件の詳細なレポートが掲載された。同社の社長に抜擢されて解雇された英国人元社長Michael Woodford氏にインタビューして書き起こしたドキュメンタリー風の記事だ。長くなるが、同氏が主張する事実関係を、要約・引用させていただく。

 同氏は今年春の株主総会で社長に指名された。その後しばらくして日本の雑誌「ファクタ」8月号のオリンパスに関する記事が出た。社外の友人が記事を英訳して見せてくれた。オリンパスが2008年に英国の医療機器メーカーGyrusを買収した件についての記述だ。買収価格の1/3にも上る巨額の手数料が英領ケイマン諸島にあるAXAM という会社に支払われていた。

 なぜこのような支払いがなされたのか。過去のこととは言え、決算報告書に署名をするのはWoodford氏である。職責を全うするには、意味不明な資金の動きを理解しておく必要がある。事の真相を菊川社長はじめ元経営陣に質すが、誰も口をつぐんで話そうとしない。菊川会長は「この記事はくだらない記事だから無視するように」と言うだけだった。何かが隠されていると感じたWoodford氏は、菊川会長と森副社長に書面で質問状を提出し、監査法人であるErnst & YoungにもメールのCC(コピー)を送った。

 あるとき森副社長と話をしていて、「あなたの上司は誰ですか」と質問したら、「菊川会長です」と即座に返ってきた。Woodford氏は社長ではあっても副社長の上司ではなかった。役員の人事権もなくては社長としての職責を果たすことは難しいと考え、菊川会長が持っていたCEO(経営最高責任者)の肩書きの譲渡を要求し、会長がこれから経営会議に出席しないことも要求した。

 菊川会長は「そんなことは日本の株主が許さない」と頑として応じない。そのうちに怒鳴りだすようになった。Woodford氏も「私はあなたのプードル(何でも言うことをきく子犬)ではない」と怒鳴り返した。続けて「あなたがCEO の座を降りないのなら、私が社長を辞任させてもらう」と応酬した。ついに菊川会長が折れて、CEO の譲渡と経営会議への不参加を承諾した。