LNG価格の低迷が元凶

「これまで数十のLNG輸出プロジェクトが始動してきたけれど、そのうちスケジュール通りに完遂したのなんて、片手で数えられるくらいしかない」。あるエネルギー事業関係者は声を潜める。

 LNG輸出プロジェクトは、タンクやLNGの液化設備の建設を伴うなど、ただでさえリスクの高いビジネスだ。しかも、発注した部材の品質不備、労働者との賃金交渉の難航など、遅れの原因に事欠かない。

 特に今は外部環境も思わしくない。LNGの売り手からすると、LNG価格が高いときは、多少コストがかさんでもとにかく早く設備を造って売り出した方が好都合だ。しかし、LNGの価格が伸び悩んでいる今は、建設コスト等の増額に対して保守的な態度を取らざるを得ない。「早く設備を造るうまみがないから、何か問題が起きるとすぐに建設も止まる」(エンジニアリング会社役員)。

 プロジェクトが進まなければLNGを運ぶ船もすぐには要らなくなるというわけで、LNG船の納期が遅れているのだ。

 スケールメリットを生かして効率よく船を建造しようとしていた川崎重工の目算は外れた。建造資材のコストや要員の人件費に狂いが生じて、想定したコストダウンが見込めなくなったからだ。

 完成した船を係留しておく場合のコストも、「船主に配慮して、一定期間はうちが負担しなければならない場合もある」(川崎重工役員)というから手痛い。

 川崎重工はガスや石油の海底設備のメンテナンスコストを低減できる自律型無人潜水機を開発中。それでも、LNG船で食らったとばっちりを挽回するのは簡単ではないだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)