食えない弁護士増加で
弁護士自治に綻び

「書面の書き方とか法廷戦術とか、弁護士業務に関することはイソ弁時代に教えてもらえます。でも、個人事業主としての経営手腕とか資金繰りとか、そういうことは誰も教えてくれません」(同前)

 法律家として腕を磨くことが最優先、金儲けは二の次――。一見、美しい矜持ではあるが、弁護士の数が少なく、それなりに食えていた時代だからこそ通用した話である。下の図を見ていただきたい。10年前と比べて弁護士数は約1.6倍。一方、弁護士の主な「食い扶持」である民事事件件数を見てみると、過払い返還バブル中の07~11年あたりは大きく増えたものの、現在はすでにバブルが弾けており、10年前と同水準にまで減少している。

 いよいよ食えない弁護士が増えたからか、弁護士自治にも綻びの兆しが見えている。関西の「単位会」と呼ばれる都道府県弁護士会で副会長経験のある弁護士は、「懲戒処分を軽く見る弁護士が増えてきた印象がある」と指摘する。

 懲戒処分には、実質的に弁護士の身分を失う「除名」や「退会命令」といった重いものから、「業務停止」や「戒告」といった、軽めのものまである。そして、弁護士の身分を失わない業務停止、戒告といった処分は、「ペナルティとして機能していない」(懲戒処分を受けた経験のある50代弁護士)ところがあるのだという。

 たとえば、先のアディーレ事件で下された業務停止処分は、その期間中には弁護士業務が行えず、処分が明けてからも、弁護士会や地方自治体主催の相談会に3年間は呼んでもらえない。さらに、所属弁護士会のある裁判所、検察庁にも知らされる。戒告も同様で、弁護士会主催の相談会に3年間は呼んでもらえない。また、弁護士会の役員選挙への出馬も「遠慮しなければならない」(前出の弁護士)。

 しかし、「弁護士会で行っている委員会活動とか、役員選挙とか、そういうのに興味なければ別に困ることはありません。無料相談会に呼ばれなくても、自分で仕事を取ってくる弁護士なら、これによる不都合はない。収入のある弁護士なら痛くもかゆくもありませんよ」(同)