介護保険改定で自立支援介護が「一歩前進、二歩後退」となった理由

「介護はこれから自立支援に軸足を置く」と宣言した安倍首相

 来年4月から始まる第7期の介護保険報酬の0.54%引き上げが決まり、サービス内容についても厚労省の改定案がまとまった。サービス内容は、今春から20回にわたって開かれた社会保障審議会介護給付費分科会の審議結果によるものだ。なかで、注目されたのは、「自立支援」をどのように制度の中に取り込んでいくかであった。

 昨年11月10日の政府の未来投資会議の席上、安倍首相が介護保険制度について「介護はこれから自立支援に軸足を置く。パラダイムシフトを起こす。介護の要らない状態までの回復を目指す」と大胆な提案をぶち上げ大きな話題となった。自立支援により重度者を減らして、介護費の抑制につなげる方針を高らかに宣言したのである。

 同会議では、「自立支援介護」を主張する竹内孝仁医師による「4つの介護」の成果の発表などもあり、一躍「自立支援」の嵐が介護関係者の間を席巻し始めた。「自立を目指す介護をした結果、要介護度が軽くなると事業所に入る介護報酬が下がるのは、制度が孕む矛盾である」という声も高まってきた。

「要介護度を改善させたらインセンティブ措置として報酬増を、悪化させたらディスインセンティブとして報酬減を」という提言も未来投資会議であった。

 自治体の中には、要介護度が軽くなれば事業所に「ご褒美」として一般財源から奨励金を出すところも続出している。施設入居者に対して、要介護度が1段階下がると月2万円を渡している東京都品川区はその典型だろう。

 こうした、「自立支援」の大波を受けて、厚労省がどのような判断を下したのか。答えは「一歩前進、二歩後退」というわかり難い裁定を下したと見ていいだろう。「前進と後退」はいずれも利用者目線であることは言うまでもない。