2012年の金相場を動かす世界経済の動き。2012年は上昇要因が優勢に
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 2011年8月に一時1オンス=1900ドルを突破した金価格。欧州債務問題の深刻化や米国債の格下げとともに2000ドルを超えるかと思いきや、その後1600ドル台まで大きく値を下げた。

 「石油と違って燃えてなくなることのない金は、つねに在庫があふれているので、ある程度の高値を付けると、売りが入って上値が重くなりがちです。しかし、長期的に金の上昇相場は続くでしょう」と予想するのは、元ワールド・ゴールド・カウンシル日本代表で、日本における金投資の第一人者である豊島逸夫さん。

 今年の夏、金価格が急騰したのは、欧米の問題でドルやユーロへの信用不安が高まったからだ

 「通貨の価値は国の信用力によって支えられているものですが、金の価値は金そのものの信用によって支えられています。欧米の信用不安は当面続くはずですから、ドルやユーロが売られ、破綻懸念とは無縁な金に資金が流れ込む動きは来年も続くでしょう。瞬間的に2200ドルを付ける可能性もあります」(豊島さん)

新興国の旺盛な需要も金価格を押し上げる

 新興国による金の購入が拡大することも、価格上昇要因となりそうだ。
「最大の金消費国である中国やインドは高インフレに悩まされており、資金が金に流れやすい状況が継続しています。また、新興国が外貨準備として年間500トン前後の金を購入しており、これが金価格の長期上昇トレンドを支える要因になっています」(豊島さん)

 また、ドル建ての金価格は過去10年間で約6倍上昇したが、金の生産量はそれほど伸びていない。「慢性的な供給不足も、金価格を押し上げる要因となりそうです」と豊島さんは指摘する。

 一方で、ギリシャでデフォルト(債務不履行)が発生するなど、リーマンショックを上回るような危機が発生すれば、安全資産と言われる金でも大暴落する危険がある。欧州危機の不安が遠のいた場合も、利息を生まない金からドルやユーロなどに資金が流出して、値を下げる可能性はあるだろう。

 「長期的には上昇が期待できるにしても、短期的にはさまざまな要因によって大きく値を下げる可能性があります。純金積立やETFを1口ずつ購入するなど、なるべく購入するタイミングを分散してみるのがいいでしょう」(豊島さん)