「生きてもいいですか?」生活保護引き下げ反対デモの参加者に聞いた本音デモが無事に終了し、記念撮影を始めようとしているところ。掲げられた2枚の横断幕は生活保護で暮らすMさん(女性・38歳)の作品で、「生活保護はみんなの味方」「生きるを守る 生活保護改悪反対」とある

 今回は、2018年1月4日午後に新宿で行われた、政府の生活保護引き下げ案に反対するデモの様子、デモ参加者たちの素顔と思い、さらに経済学者・井手英策氏(慶應義塾大学教授)の思いを紹介する。

「リレーメッセージデモ・わたしたち、明日を生きてもいいですか?」と題されたこのデモは、西武新宿駅近くから、JR新宿駅を大きく一周して戻ってくる1時間程度のコース。参加者は80名程度のように見えた。メガフォンを使ってメッセージを語りながら歩んではいるけれども、「主張を声高らかに叫ぶ」という感じではない。

 参加者の男女比は正確にはわからないが、女性40%、男性60%程度だろうか。年齢構成は、50代以上が70%程度のように見えた。そして特筆しておきたいのは、生活保護で暮らした経験を持たない人々が、少なからず含まれていたことだ。しかもその人々の多くは、いわゆる「プロ市民」ではない。

「生活保護は守んなきゃダメ」
当事者でないのにデモに参加する男性

「生きてもいいですか?」生活保護引き下げ反対デモの参加者に聞いた本音貧困・生活保護・ホームレス・拉致被害は「みんな辛い」というAさんは、いつも左胸に拉致被害者救出のシンボル・ブルーリボンを着けている

 Aさん(男性・56歳・自営業)も、そんな1人だ。生活保護の経験はなく、社会的活動が生活の中心というわけでもないが、生活保護や貧困にかかわる運動に日常的に参加している。

 高校卒業後、機器メンテナンス・製本など、数多くの現場で働いて生活してきたAさんは、2008年末の「年越し派遣村」のころからホームレス支援に関わり、炊き出し・夜回り・生活保護申請の付き添いなどの活動に参加し始めた。Aさんは、ホームレス支援のきっかけを、「近所に、ホームレスがたくさんいたから」と、ごく自然に語る。

 当時のAさんは、新宿駅から徒歩15分ほどの地域に住んでいた。2008年末は、「派遣切り」にリーマン・ショックの影響が重なり、職と住を同時に失う成り行きが全国の至るところに見られた。

 Aさんは、新宿の街並みを指差しながら、「ホームレスになっている人たちは、建設労働者が多いでしょう? そういう人がいて、ビルや道路ができて、街ができているわけでしょう?」という。続けて、語気を少し強めて語る。

「建設労働者は日雇いだから、職にあぶれると、路上に出て来ることになるんです。街をつくっている人たちが食えなくなったら『知らない』って、そんなのおかしいじゃないですか」