「労働力」が機械に奪われて
景気がよくても失業率が高まる可能性も

 労働市場には別の種類のリスクの兆しを読み取ることができます。

 多くの先進国では失業率が大きく低下しており、労働力が増える見込みは減っているとされていますが、これを疑ってみるのも一考の価値があります。

 というのも、労働参加率は通常の好況期と比べて低水準で推移しているため、失業率は計算上低く見えるだけで、実は労働力が労働市場に供給される余地が残っている可能性があるのです。

 労働市場に関するもう一つのリスクがあります。それは、「AI(人工知能)に仕事が奪われる」という技術革新に伴い生じるものです。

 どういうことかというと、給料の高い労働の担い手が人から機械へと変わりつつあり、それが全体で見た賃金の上昇を抑えているのではないかという見方もできるのです。先日、メガバンクが大規模なリストラを行うと発表したことも、この流れを汲んでいると言えるのではないでしょうか。

 こうした考え方は、まだエコノミストの間で確立していませんが、技術革新が賃金の上昇、ひいてはインフレの高まりを抑制している可能性は確かにあります。現在は、「技術による労働代替」と「好況から来る人手不足」のバランスが取れている状況だと思われますが、今後も同様の状況が続くと考えて良いかは疑問の余地があります。

 これから心配すべきなのは、人手不足が技術代替を上回って賃金が上昇したり、インフレになったりすることよりも、技術代替が大きく進んで労働需要が減退してしまうことかもしれません。景気がよくても失業率が高まる状況は、これまでほとんど経験したことがないだけに、政策当局者は大いに困惑すると思われます。

 企業は今のうちから新技術を活用した新しいビジネスや起業を行いやすくする等、新技術を積極的に受け入れ、取り込み、活用するような手立てや取り組みを大がかりに行うことが求められているように思われます。個人レベルでも同じことが言えるでしょう。