
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第17回(2025年10月21日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
1週間と2日かけてたどりついた2階に
第4週「フタリ、クラス、シマスカ?」(演出:松岡一史)は東京編。
明治19年(1886年)、トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)は出奔した銀二郎(寛一郎)を追って東京市本郷へ向かった。
蛇(渡辺江里子)と蛙(木村美穂)がトキの行程を説明。蒸気船、川船、汽船を乗り継いで、1週間と2日かけてたどりついたそうだ。
節約で歩きを多くしたため、足にケガしていることを指摘して、「がんばったのね〜」と蛇と蛙がねぎらう。
トキは銀二郎が実家に伝えておいた行き先にたどり着く。そこにいた女性に「小豆洗いみたいな顔して」と説明するが、小豆洗いにそんなに似ている? 以前から1ミリも似てない気がして見ているのだが。強いていえば、目が大きく、なにかギラギラと輝いているところか。それは寛一郎の父・佐藤浩市、祖父・三國連太郎にも共通している気がする。
名優の家に生まれた寛一郎。三國と佐藤はひじょうにクセの強い俳優だが、寛一郎はおとなしい真面目な青年の演技で、祖父と父とは印象が違う。ただ、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)では父の敵討ちとして源実朝を暗殺する公暁役で、次第に追い詰められて深い闇に潜っていく濃厚な演技に注目が集まった。それこそ「うらめしい」の極地をいった役であったが、『ばけばけ』では浄化されたかのように汚れない純粋な婿殿だ。
理不尽に働かされてブチ切れて、松野一家を惨殺したりしないで、東京にひとり去った銀二郎。いま彼が『ばけばけ』では最も感情移入できる存在といって過言ではない。
さて。幸運にも「うちの2階に住んでる」と言われたトキ。順調に2階に通してもらえる。個人情報が厳格な令和と全然違う無防備な時代。
2階に上がったトキ。「どげんしよう」