これ以上、生活が厳しくなるのはごめんだ――。現在、多くの家庭が危機感を抱いている。消費税増税、電気料金値上げ、ボーナスの減少など、足もとでは家庭にのしかかる新たな負担が目白押しだ。それに加えて、食品や外食の値上がり不安がにわかに募っている。米国を襲っている大干ばつが、世界で常態化している食料需給の逼迫をさらに深刻化させるなか、価格高騰の影響が日本の食卓にも及び始めている。しかし、決して油断できないとはいえ、現在の日本の経済状況を考えると、過度な不安を抱く必要はないという見方もある。専門家の見解を交えながら、「食料大高騰時代」の杞憂と真に論じるべきリスクを分析する。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)
軒並み史上最高値をつける食料価格
増え続ける家庭の負担にダメ押し?
「これ以上、生活が厳しくなるのはごめんだ」「日々の買い物を見直し、外食費も抑えなければ……」
そんな声が、今にも巷から聞こえてきそうだ。メディアで頻繁に報じられる食料価格高騰のニュースは、不況のなか細々と節約を続け、なんとかもちこたえている日本の家庭に暗い影を落としている。
世界の食料需給は、新興国における食料需要の激増、バイオ燃料をはじめとするエネルギー需要の本格化などを背景に、ここ数年、逼迫を続けてきた。
足もとでそんな状況に拍車をかけているのが、米国での大干ばつなどによる不作の影響だ。需給のタイト化により、穀物価格が軒並み過去最高値を記録している。
ロイター通信(8月30日)は、世界の食料価格が7月に約10%上昇したと発表。トウモロコシと小麦は約25%、大豆は17%と深刻な値上がりが続いている。需給の逼迫を睨んだ投機筋の資金が市場に流れ込んでいることも、価格上昇を後押しする大きな要因である。
それに伴い日本では、政府が輸入小麦を製粉業者に売り渡す価格が10月期から対前期比3%上昇する見込みだ。なかでも、うどんや菓子などに使われるソフト系は8%と上昇幅が大きい。