1994年に米民間シンクタンク・地球政策研究所長のレスター・ブラウンが、「誰が中国を養うのか?」という鋭い質問を出した。迫りくる食糧危機の時代に早くも警鐘を鳴らした。しかし、当時の中国はむきになって反論していた。

 だが、それほど時間が経たないうちに、中国の専門家も政府側もこの警告には耳を傾けて聞く必要があるということに気づいた。

食糧輸出にブレーキをかける

 2003年までは食糧輸出国だった中国が、2004年は歴史上初めて純食糧輸入国に転じた。その後の食料栽培刺激策の成果もあり、2006年からまた穀物の純輸出国の地位を取り戻したが、輸出の規模はかなり小さくなった。食料はますます戦略商品化する一方だ。

 2007年7年12月、共産党政治局会議は中国国内の農業生産にさらに力を入れ、農産品の安定した供給体制を確保しようと、自ら中国の食料安全保障問題に対して警鐘を鳴らした。

 それを受けて、中国政府は一連の緊急措置を講じた。小麦、コメ、大豆など84種類の食料とその粉末加工品に対して、輸出促進を目的として設けた5~13%の輸出還付税を同12月20日から廃止した。さらに、同12月30日には、2008年1月1日から12月31日までの1年間、小麦、トウモロコシ、コメ、大豆など穀物と穀物製品の8種類57品目に5~25%の輸出関税を課す、とさらにこれまでの食糧輸出促進政策にブレーキを踏み込んだ。

 中国が急速に食料輸出国から食料純輸入国へ変わりつつあることが、その背景にあると言えよう。

 2012年は、中国の食糧需給率が90%を切ったといわれている。食糧危機、食糧安保という言葉がメディアに頻繁に露出するようになった。習近平国家主席も「食糧安保は中国の恒久的な課題であり、いかなるときも気を抜いてはならぬ」と叱咤している。