発想にヒミツの情報源は必要か?

 発想力に関する本を書いたり講演をしたりしていると、ときどきヒトに尋ねられます。「ふだん、どういう雑誌や新聞を読んでるんですか?」

 このとき、質問者が期待している答えは「ヒミツの情報源」です。いや、ヒミツとまでは言わないまでも、英字新聞を毎日読んでいるとか、CNNを欠かさず見ているとか、もしくは政財学界の中枢にいる友人たちから…。自慢ではないですが私は日本語を読むのがとっても速いので(つまり英語は遅い)ふだん日本語の新聞雑誌しか読みませんし、日本語のテレビしか見ません。ヒミツの情報源など、何もないのです。

 前回、「年末年始の読書のススメ」として、科学書とSFを取り上げました。『人類の足跡10万年全史』と『青い空まで飛んでいけ』でした。これらは私の「ヒトとはちょっと違った情報源」かもしれません。ただそこから、何を読み取るかは自分次第。誰にでも手に入る情報から、特別な何かを見いだす力こそが「発想力」の源なのです。

 改めて、新年あけましておめでとうございます。前回が好評だったので今回も「年末年始の読書のススメ」を続けます。そして今回扱うのは難しげな科学書でもSFでもなくマンガです。わが家の今の壁一面を埋め尽くすマンガの中から、珠玉の数冊をご紹介しましょう。

 テーマは、ヒトの幸せ、です。

『風の谷のナウシカ』は
ヒトの愚かさを描いた壮大な戦記である

 『風の谷のナウシカ』は言わずと知れた宮崎駿さんの作品です。1984年3月に封切られた同名の映画は、各界で非常に高い評価を受け、彼の映画出世作となりました。日本テレビの「金曜ロードショー」では13回も放送されているそうなので、視られた方も多いでしょう。

 しかし、そこで描かれた世界は「アニメージュ」に連載された原作(*1) の、数分の一に過ぎません。マンガの単行本で言えば、全7巻のうちの2巻目の80頁目くらいでしょうか。ナウシカの旅は、そして戦いは、そこからが本番です。

*1 連載は「アニメージュ」の1982年2月号から1994年3月号で、完結まで12年を要した。全7巻。