自動車 解体#4Photo:JIJI

日産自動車の株主総会で異変が起きた。会社提案の社外取締役候補だった永井素夫氏(みずほフィナンシャルグループ出身)の再任が否決されたのだ。一見すると「みずほ人脈排除」に映るが、話はそれほど単純ではない。なぜ永井氏だけが株主の厳しい審判を受けたのか。特集『自動車 解体』の#4で永井氏失脚の背景をたどると、歴代社長人事やホンダとの協業問題にもつながる、日産特有の伏魔殿人事が浮かび上がってきた。(ダイヤモンド社メディア編集局論説委員 浅島亮子)

なぜ永井氏だけが再任否決?
日産「伏魔殿人事」の深い闇

 前代未聞の事態が起きた。6月23日に開かれた日産自動車の定時株主総会で、会社提案の社外取締役候補だった永井素夫氏の再任議案が否決されたのだ。

 永井氏は旧日本興業銀行出身で、日産のメインバンクであるみずほフィナンシャルグループ(FG)の要職を歴任した人物である。2014年6月に日産社外監査役に就任、19年6月からは社外取締役を務めてきた。監査委員長のほか指名委員会と報酬委員会にも所属。3委員会全てに名を連ねる唯一の取締役として、取締役会に大きな影響力を持っていた。特に経営トップ人事に関与してきたことから、社内では「陰の実力者」として知られていた。

 今回の人事は、一見すると「みずほ人脈の排除」に映る。実際に、日産の主要株主である仏ルノー(議決権ベースで15%)は、みずほFG出身の永井氏と真保順一氏の選任議案について、議決行使を棄権した。米大手議決権行使助言会社も両氏への反対を推奨し、経営の独立性に疑問を呈していた。

 確かに、取締役会に「みずほ2枠」が存在することに違和感を抱く株主は少なくなかったはずだ。しかし、それだけで今回の否決を説明することは難しい。

 というのも、株主が拒絶したのは、「みずほ人脈」だけではなく、永井氏個人によるところも大きいからだ。真保氏が73.74%の賛成を得て承認された一方で、永井氏の賛成率は48.33%にとどまり落選した。昨年の91.53%から40ポイント超も支持を失った計算になる。その急落ぶりは、 “みずほ色の払拭”だけでは説明できない。永井氏を巡る日産特有の政治力学が働いていたのである。みずほの利益代表者から変節した永井氏が、権力の中枢に躍り出て、凋落に至った内幕を明らかにする。