日米韓の関係に
くさびを打ち込みたい北朝鮮

 2018年の元日、北朝鮮の金正恩委員長は恒例の“新年の辞”を読み上げた。多くの報道では、同氏の発言の中でも「北朝鮮の核攻撃能力が米国全土を射程に入れ、そのボタンが執務室のデスクに置かれている」との部分が取り上げられた。

 それは米国に対する威嚇に他ならない。北朝鮮は核攻撃力を確立することによって、米国から制裁解除などの譲歩を引き出すことを最重要視している。従来と変わらない北調整のスタンスだ。

 同時に、新年の辞では北朝鮮の姿勢が変化していることも示された。委員長自ら、韓国と対話する用意があることを示したのである。これまでの金委員長の発言を振り返っても、ここまで北朝鮮が韓国に歩み寄り、対話する姿勢を示したことは珍しい。

 昨年の大統領選挙で北朝鮮との融和政策を重視する文政権が誕生して以降、北朝鮮は文大統領の呼びかけに積極的に応じることは控えてきた。北朝鮮には、五輪への参加を仄めかせば韓国がもろ手を挙げて北朝鮮の考えを歓迎するという目算があったのだろう。

 韓国が北朝鮮との対話を重視するようになれば、制裁強化など圧力を重視する米国とは歩調が乱れる。安全保障を米国に頼る韓国が米国とは異なる対北朝鮮路線を進める場合、国際社会にも圧力ではなく対話が重要との発想が広がるかもしれない。それは、金独裁政権が体制を維持し、国内の統治基盤を強化するために重要だ。韓国に米国の政策から距離を取らせることが、北朝鮮の真の狙いだろう。

 文大統領は、経済運営の頼みの綱である中国との関係を修復できていない。国内世論からの批判も増えている。同政権にとって、朝鮮半島で南北が参加して冬季五輪を開催することは、韓国世論に成果を示す限られたチャンスだといっていい。

 そうした状況に目をつけて、北朝鮮は絶好のタイミングを計り、韓国に歩み寄る姿勢を演出したともいえる。このように、五輪参加などの歩み寄りを見せることで韓国に制裁解除などを要求し、同時に基本姿勢を変えないという外交は北朝鮮の常套手段だ。