今後の展開予想
高まる朝鮮半島情勢の緊迫化リスク

 今のところ、オリンピックが閉幕すれば、米国は軍事演習を実施する方針だ。いずれ融和ムードはしぼみ、従来のように朝鮮半島情勢への不安が高まりやすい状況が戻るだろう。

 金委員長の新年の辞に対して、トランプ大統領は自らの核のボタンはより強力であり、実際に作動するとやり返した。依然としてトランプ氏は、彼流のビジネスの発想の延長線で外交交渉を進めようとしている。

 米国内では、北朝鮮の核施設の機能を破壊すべきとの考えも増えつつある。米朝が互いに威嚇しあう中で連鎖反応のように緊迫感が高まり、偶発的な衝突が起きるリスクは上昇していると考えられる。

 これまで北朝鮮の後見人のような役割を担ってきた中国の姿勢も変化している。中国は金委員長の独裁政権と距離をとりつつある。国連安保理が採択した北朝鮮への制裁を中国が遵守していないとの見方もあるが、中国国内では北朝鮮系で最大手のホテルが営業を停止するなど、制裁の効果は徐々に発現していくと考えるべきだろう。

 さらに、中国は金政権の“次”の対応準備も進めているようだ。国境を挟んで北朝鮮と接する吉林省には、北朝鮮からの難民を収容するためのキャンプ施設が設営されたと報じられている。また、年明けに習近平国家主席は全軍での訓練を実施し、臨戦態勢を整えている。それらは、朝鮮半島での有事勃発を想定し、混乱が国内に広がることを食い止めるための取り組みに他ならない。

 この状況の中、わが国は自力で国力を高めなければならない。安全保障面では、米国との関係を基礎にして、自国を防衛する方策を整える必要がある。外交面では、制裁などを通して金独裁政権の暴走を抑え、北朝鮮を多国間協議の場に引き出すための取り組みが必要との認識を各国と共有し、実際に取り組むべきだ。

 極東情勢の安定は、わが国社会の安定に直結する。自力でその状況を実現するためには、わが国の主張に賛同する国を、一つでも多く獲得することが欠かせない。具体的には、世界各国が成長の源泉として期待を寄せるアジア新興国でのインフラ開発支援を増強し、親日国を増やせばよい。政府はそのために従来以上のエネルギーを注ぐべき時を迎えている。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)