これが先に述べた「イベントモード」で、瞬間消灯が原理的に発生「する」のではなく、疑似的に発生「させる」機能を追加したというわけだ。旧型電車と同じ原理で瞬間消灯を実現させてほしかった気もするが、1000系の従来車がベースになっている以上、電気関係の配線を大きく変えるのは難しかったという。見た目には疑似的であっても消灯することには変わりないし、この辺はやむを得ないところだ。

 イベントモードの初使用となった今回のイベントでは、募集定員90人に対して4090人が応募。倍率は約45倍という人気の高さだった。それだけ「昔懐かしい瞬間消灯を体験してみたい」という人が多かったといえるだろう。参加者から話を聞いてみても、「昔は銀座線で会社に通勤していたから(瞬間消灯は)懐かしい」(72歳男性)といった声が多かった。

増える「新型の旧型車両」
誘客とコスト削減を両立か

山口線のSL列車「やまぐち号」で使われている客車も2017年9月に「新型の旧型車両」に置き換えられた

 瞬間消灯はサービス上の問題もあるため、通常の営業運転で使われることはない。ただし、東京メトロは今後も特別仕様車を使ったイベント列車を運転し、その際にイベントモードを使用して瞬間消灯を再現する方針だ。

 旧型車両風の設備を設けた新型車両は、東京メトロの特別仕様車だけではない。2017年年9月には、JR西日本の山口線で運転されているSL列車「やまぐち」に新型客車が導入された。これまで使ってきた1972年製の客車が老朽化で使えなくなったためだが、走行装置や空調装置などは現代の新型車両と同じものを導入する一方、車体の内外は昭和初期の客車を模した造りになっている。言うなれば「新型の旧型車両」といったところだ。

 高齢化世代が増えているせいか、昔の技術や文化と「再会」したいという需要は年々増えているように思われる。銀座線の特別仕様車や山口線の新型客車も、そういった需要に対応した誘客策の一つだろう。それなら旧型車両を維持し続ける方がいいような気もするが、昔の車両は交換部品の製造が終了しており、修理の際は小ロットで部品を製作しなければならないなど、コスト面で問題が多い。旧型車両を維持し続けるより、旧型風の新型車両の方が安く済むという事情もありそうだ。

 銀座線や山口線に限らず、誘客とコスト削減の両立を目指した「新型の旧型車両」が、今後も各地で続々とデビューすることになるかもしれない。

(鉄道ライター 草町義和)