帝王切開の傷が痛いのは
あたりまえじゃなかった
(困ったなぁ、このままじゃ、まずいよね)
萌さん(仮名・38歳)は一児の母。1年前に長男を帝王切開で産んで以来、夫の卓也さん(仮名・37歳)との「夫婦の営み」は途絶えたままであることを悩んでいる。
不仲になったわけではない。ただなんとなく、そんな感じにならないのだ。一度だけ、再開っぽい雰囲気になったことがあったが、萌さんの腹部に走る赤紫色に盛り上がった傷痕を目にすると、卓也さんは「痛そうだね。大丈夫」と心配そうに尋ね、「うん、ちょっと痛い」と答えると行為をやめ、後は抱き合ったまま眠ってしまった。
正直、萌さんは、ほっとした。臍の下から恥骨まで延びる痛々しい傷痕は、見た目にたがわず始終痛痒くなり、時には耐え難いほどひりひりズキズキ痛むこともある。
産婦人科の本には、「帝王切開後のSEXは、1ヵ月から2ヵ月後には再開して大丈夫」とあるが、傷の痛みは膣の方まで続いているような気がして、とてもそんな気にはならない。怖い。
だが、卓也さんは健康な男性だ。性欲だって普通にあるだろう。それなのに、1年以上もセックスレスで平気なのか。(可哀そう、それにこのままじゃ、浮気されちゃうかも。うううん、もうしてるかも!)と思うと、気が気ではない。
実際、この頃、以前より帰宅は遅くなっており、眠るときも心持ち、背中を向けられていることが多いような気がする。
そんな悩みを、ある日萌さんは、数人のママ友に打ち明けた。子どもの検診で知り合った、ほぼ同じ時期に出産した友達だ。