「投資信託を取り巻く環境は、リーマンショック後よりも悪く、見通しが立たない」(大手証券)

 投資信託協会によれば、リスク資産で運用する株式投信からETF(上場投信)を除いたベースで、投信の資金流出入額(新規購入から解約・償還を差し引いた額)は、2011年12月も資金流出となり、9月以降4ヵ月連続でのマイナスになるという。

 流出額だけで見るとリーマン後のほうが大きいが、米国政府が迅速に動き、すぐに回復基調に戻った当時に比べて今回の欧州債務危機は、いつ収束するかわからず流出が止まらない。

 さらに、円高や新興国経済の減速懸念が、昨秋以降、最近主流の高利回りを狙った価格変動リスクの大きい投信を直撃している。

 なかでも急減速しているのが、個人投資家の人気を集めてきた毎月分配金が出るタイプのブラジル関連の投信だ。外国債券など本来の投資対象とは別に運用通貨を選択できる「通貨選択型」が中心で、高金利・通貨高への期待からブラジルレアルが約6割を占めていた。

 だが、9月にブラジル中央銀行が利下げに動いたことで、通貨レアルの相場は対円で急落。個人投資家のあいだでは解約や買い控えが広がった。

 また、毎月分配型の代表格である「グローバル・ソブリン・オープン」も、欧州の国債を大量に保有していたことから運用成績が急速に悪化。一時は6兆円を超えた純資産残高がいまや2兆円割れだ。

 そこに追い打ちをかけたのが、金融庁が12月に通貨選択型の販売に関して規制を強化する旨を発表したこと。もっとも、「これまでも慎重に販売してきた」と証券各社は話すが、それでも規制が強化されれば、「コストは増大する」と懸念する声は絶えない。

 投信を取り巻く環境は厳しさを増すばかりで、個人投資家はリスクを嫌い、安全資産へのシフトを強めている。

 ブラジルレアル単一通貨ではなく、豪ドルやメキシコペソなど5~6通貨で運用する通貨バスケットを採用することでリスクを分散させる通貨選択型投信や、同じ通貨選択型でも分配金は少ないがリスクの低い円建てコースにシフトしているという。

 また、内需が好調なアジア企業の株式や債券で運用する投信や、鉄道や通信など高格付けの公共インフラ企業の社債などで運用する投信、「株価が割安な日本企業の配当利回りに着目した投信が売れ始めた」(大和証券)と、一部では明るい兆しがないわけではない。

 とはいえ、これまで絶好調だった投信販売から比べると、下げ基調にあることに変わりはない。欧州危機に解決のメドがつかない限り、厳しい環境は続くだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)

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