金価格はリーマンショック以降下値のメドであった26週移動平均を下回ってきた。これまで上昇を続けてきた金であるが、9月の下落に続く今回の下落は、リスク回避志向の強まりによるものであり、欧州債務危機がいよいよミニリーマンショック化してきたことの証左であるとの見方ができる。

 金は、運用資産としての一面のほかに、通貨、宝飾品、工業用金属などの多様な面を併せ持っていることから、相場水準を定量的に割安、割高と判断することが難しい。

 供給面では、鉱山からの採掘だけでなく、リサイクルなどによる再生量がかなりの部分を占めている。これも相場水準の判断をしにくくしている。

 需要面でも資産運用としてのニーズ以上に、宝飾品や工業部品用の需要、地金での保有も多くの部分を占めている。それゆえヘッジファンドなどが短期的に投機的な売買に動いたとしても、それが相場の大きな流れにはなりにくい。

 金よりもインフレに対して連動性が強いと考えられる原油と金のスプレッドの最近の動きを見てみると、直近はリーマンショック以降に次ぐ、スプレッドの拡大幅だったことがわかる。