一般論として、国の発展度合いは、一体何で測ればいいのだろう。これまで、GDP(日本は世界3位)の他、HDI(人間開発指数、Human Development Index. 日本は2011年で世界12位)や、HPI(地球幸福度指数、The Happy Planet Index. 日本は2009年度で世界75位)、昨年国王夫妻が来日され一躍脚光を浴びたブータンが掲げるGNH(国民総幸福度、Gross National Happiness)等、さまざまな指標が提唱されてきた。

 わが国でも、昨年12月に内閣府経済社会総合研究所より、「幸福度指標試案(幸福度に関する研究会報告)」が公表されており、また、法政大学が昨年12月には、都道府県の幸福度ランキングを発表して、福井県がトップになったことが報道された。

 しかし、筆者は、やはりGDPを中軸に据えるべきだと考えている。なぜなら、人間は肉体を持った動物であって、霞を食べて生きていくわけにはいかないからだ。2500年以上も昔、斉の桓公を補佐した名宰相、菅仲が「衣食足りて礼節を知る」と喝破した如くに。

GDPを押し上げるには、2つの方法がある

 では、経済(GDP)を成長させるためには、どうしたらいいのか。前回のコラムで実質GDP成長率が「労働生産性上昇率」+「労働者増加率」として表わされることを指摘した。そうであれば、経済を成長させる方法は2つあるということになる。要するに、労働生産性を上げるか、労働者を増やせばいいということだ。

 まず労働生産性から見ていこう。日本生産性本部がまとめた「労働生産性の国際比較2010年版(2010年12月20日)」によると、日本の労働生産性(2009年)は、1998年以来、11年ぶりに前年度水準を割り込み、順位もOECD加盟33ヵ国中、第22位、主要先進7ヵ国では最下位となった。

 次にこれを主要産業別に見てみよう。主要先進7ヵ国中トップの米国を100とすれば、製造業の労働生産性は70.6%となり、米国に次ぐ第2位の地位にある。ところが、サービス産業(第3次産業)を見ると、卸小売で42.4%、飲食宿泊で37.8%、運輸で48.4%、ビジネスサービスで50.8%といずれも米国の4~5割の生産性水準にとどまっている。つまり、わが国のサービス産業分野の立ち遅れが、日本全体の労働生産性水準を押し下げているのである。

 そして、言うまでもないことだが、製造業がGDPに占める割合は、約2割程度しかないのである(しかも、製造業はグローバル化して、これからさらに海外に出ていくのである)。となると、(独自の技術を開発する等して製造業の生産性を上げることは当然ではあるが)サービス産業の生産性を上げない限り、わが国の経済が、今後成長していくことはかなり難しいと言わざるを得ないのである。