男性力低下も!40~50代が「男の更年期」を乗り越える方法

「人と会うのがおっくう」「イライラする」「食欲・性欲がない」――。働き盛りでパワフルに仕事をこなす40~50代の男性でこれらの症状に悩まされている人は、「更年期障害」かもしれません。近年、男性にも女性同様に更年期障害があることは広く知られるようになってきましたが、日本に600万人の潜在患者がいるとの研究データがあるものの治療を受けている人はごくわずかです。そこで、男性ホルモン「テストステロン」の分泌量低下に起因する更年期障害の兆候から診断・治療方法について、前回に引き続き、日本Men's Health(メンズヘルス)医学会名誉理事長で現役88歳の医師、熊本悦明先生に伺いました。

ストレスが引き金で発症

 性ホルモン(男性ホルモン、女性ホルモン)が減少してくる年代で発症する更年期障害。女性は、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの急激な低下により、45~55歳の閉経前後10年間に発症します。一方男性は、女性の閉経に当たる生理的変化がないため、さまざまな症状に見舞われても「頑張れば何とかなる」とやり過ごし、さらに悪化させる傾向があるようです。

 男性の更年期障害の原因となるのが、前回解説した男性ホルモンの一つ「テストステロン」産生量の低下です。総称して「アンドロゲン」と呼ばれる男性ホルモンのうち、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)に比べ、最も分泌量が多く、作用が強いのがテストステロンです。

 その産生量は20代をピークに徐々に落ち、50歳ごろにはピーク時の1/2までに減少。平均して男性は55~65歳で更年期障害を発症します。ただ個人差が激しく、30代後半でもテストステロンの分泌量が激減し、更年期障害に悩まされる人もいます。その原因はストレスです。

 男性の場合、テストステロンは95%が睾丸(精巣)、5%が副腎で作られます。精巣の機能をコントロールしているのは、脳下垂体前葉という内分泌器官から分泌されるゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)です。コナドトロピンはストレスが強いと分泌量が減り、それに伴い、テストステロンの産生量も減ります。

 40~50代の男性は、会社や家庭での責任が重くなってストレスは増加するものの、若い頃に比べてストレス耐性が低下します。20~30代にバリバリ仕事をしていた人も加齢にプラスして強いストレスが引き金となり、若くして更年期障害を発症する多くケースが近年多く見られます。