人さし指が薬指より短いと…

ホルモンは、ヒトの生命維持に関わる情報伝達物質で、現在、100種類以上が人体で確認されています。今回紹介する男性ホルモン「テストステロン」もその一つ。近年、生きる活力を与える「元気ホルモン」であると同時に、男性の場合は分泌量の低下が更年期障害をはじめ、さまざまな病気を引き起こすことがわかってきました。男女共にさまざまな恩恵を受け、健康長寿の鍵を握るテストステロンについて、日本における男性ホルモン研究の第一人者で、88歳の現役医師である熊本悦明先生に2回にわたり解説してもらいました。

「男を作る」テストステロン

熊本悦明(くまもと よしあき) メンズヘルスクリニック東京名誉院長。日本Men's Health(メンズヘルス)医学会名誉理事長。日本抗加齢医学会顧問。医学博士。1929年、東京生まれ。東京大学医学部卒業後、同泌尿器科学講座講師を経て、University of California, Los Angeles(UCLA)に留学。帰国後、68年に札幌医科大学医学部泌尿器科学講座主任教授に就任。男性医学・泌尿器科外科学・尿路性器感染症学を中心に研究を行っている。著書に『アダムとイヴの科学』(光文社)、『男はなぜ女より短命か』(実業之日本社)、『さあ立ちあがれ男たちよ! 老後を捨てて、未来を生きる』(幻冬舎)など。日本メンズヘルス医学会名誉理事長、札幌医科大学医学部名誉教授、メンズヘルスクリニック東京名誉院長、財団法人性の健康医学財団名誉会頭、日本臨床男性医学研究所所長、オルソ・マキシマス オルソクリニック銀座名誉院長。

 さまざまな細胞や臓器の働きを調節するホルモンのうち、与えられた生命を次世代に引き継ぐ重要な役割を担うのが、性ホルモン(男性ホルモン、女性ホルモン)です。これらは主に精巣(睾丸)、卵巣、副腎皮質で作られ、子孫を残し、育てる作業の原動力となります。女性も男性ホルモンを、男性も女性ホルモンを体内で産生しますが、その比率が異なります。

 子どもを産み、安心して成長できる環境を整える「内向的能力」を与える女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)に対し、食べ物を集め、妻や子どもを外敵から守る「外向的能力」を与えるのが男性ホルモンです。

 男性ホルモンには、テストステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)があり、総称してアンドロゲンと呼ばれています。このうち最も分泌量が多いのがテストステロンです。

 男性の場合、95%が精巣で、5%が副腎から産生され、血液中に放出されます。体内を循環し、筋肉、脳、皮膚、肝臓、腎臓、生殖器、骨髄、骨などの臓器でテストステロンをキャッチする受容体に結合し、作用します。

 テストステロンが最初に分泌されるのは母親の胎内です。誰もが「女性型身体」を持ち、どちらの性へも分化できる能力を持って生を得ますが、2ヵ月ごろまでに性別の決定に関わる性染色体の「XY」を持った胎児は、Y染色体上にあるSRY遺伝子の働きで作られた精巣からテストステロンが大量に分泌され(アンドロゲンシャワー)、「男性化」します。

 具体的には、陰茎や陰嚢の発育、脳の性差形成、顔形や骨格の成長を促し、このとき浴びたアンドロゲンシャワーが多いほどより男らしく、テストステロンレベルが高いとされています。

 男児は2~3歳でテストステロンの分泌量が急激に高まり、さらに思春期には大量のアンドロゲンシャワーを浴びます。精巣が発達し、性衝動を促し、ひげが濃くなって体毛も生え、がっちりとした筋肉質な骨格になるなど、より男性的に成長するのです。