もちろん、多くの人は、事故後にその「使い方」が命取りになる可能性があることを「理解」することはできる。しかし、事故前にリスクをしっかり認識していないと、科学の作法である仮説立証を仮説抜きで実行することになり、「学ぶ」ことはできない。

 マニュアルの設計者も、作ったらそれで終わりではない。“裏技”が生まれないよう、つぶさにチェックしなければならない。

「仕事ができる」人ほど
マニュアルに従わない

「仕事ができる人」ほど致命傷を負う自信過剰のワナ

 マニュアル無視の自己流のやり方、自分勝手な仕事の進め方は、えてして「仕事ができる」と自他ともに認める人に少なくない。なぜなら、仕事ができるだけに、後生大事に周囲が守っているやり方が陳腐に見えてしまうからだ。

「マニュアルは仕事ができない人向けのテキストだ。自分には必要ない」

 とさえ認識しているかもしれない。

 こういうタイプは、本社や上司にいちいちホウ・レン・ソウなどしない。その場その場でどんどん話を進めてしまう。かつて、海外で揶揄された日本人ビジネスマンのテレックス・セールス(条件折衝のたびにいちいち本社にお伺いを立てる方法)、とは無縁の人物である。

 得意先から見れば、リーダーシップが感じられて頼もしくさえ思えるだろう。かといって、本社から全権委任されているわけではない。ある一定のルールの下で仕事をしていることに変わりはない。にもかかわらず、独断専行してしまう。となれば当然、ときにルールを逸脱してしまい、挙げ句の果てには致命傷を被ることもある。