小論文試験の受験生の悩みの多くは、次の3つに集約されます。
「どうやって評価が決まるのか?」
「自分の書いた答案は、どこが悪いのか?」
「どうすれば、合格答案が書けるようになるのか?」
本連載では、新刊『落とされない小論文』の著者が、これらの疑問に明確な結論を出します。本番直前からでも、独力で合格水準まで到達するスキルと考え方をお伝えしていきます。(構成:今野良介)

問題文を見てから完成まで
迷わず書ける「7ステップ」

初めて小論文試験を受験するとき、いきなり過去問題に取り掛かろうとしても、「そもそも、何から始めて、どう書けばよいかわからない……」という人も多いでしょう。

そこで、限られた時間をムダにせず、書くべき内容を正しく整理して迷わず書き進めるために、全試験に共通する執筆手順と思考プロセスを示します。

(1)問題を読み、答えるべきポイントを把握する
(2)答案構成の「幹」を決める
(3)字数配分を考える
(4)「幹」の内容になる「枝」を箇条書きする
(5)話の流れを整理する
(6)清書する
(7)誤字脱字などをチェックする

具体的なプロセスについて、1つの想定問題を元に説明しましょう。

合格する小論文は「この7ステップ」で書ける!<br />全試験共通の王道プロセス「この7ステップ」で一発合格せよ!

【問題】
わが国では毎年さまざまな自然災害による被害が発生しています。今後特に対策に力を入れるべき自然災害を挙げた上で、行政はそれにどのように取り組んでいくべきか述べなさい。
(1000字以内、制限時間60分)

(1)問題を読み、答えるべきポイントを把握する
この問題で聞かれていることは、次の2点です。
・今後、特に対策に力を入れるべき自然災害を挙げる
・行政はどのように取り組んでいくべきかを書く

この2点が明確になるように書きます。

(2)答案構成の「幹」を決める
(1)を踏まえ、どんな話の流れにすればよいか、いちばん大きな論点となる「幹」を考えます。
たとえば、次のように考えていきます。

・特に対策に力を入れるべき自然災害を挙げること→地震
・行政はどのように取り組んでいくべきか
→ハード面の取り組み
→ソフト面の取り組み
・全体のまとめ

(3)字数配分を考える
次に、どのパートに、どれくらいの字数を割くべきかをイメージします。問題の趣旨を考えれば、「特に対策に力を入れるべき自然災害を挙げること」は議論の前提ですから、ここに字数を割きすぎてはいけません。力点を置くのは「行政はどのように取り組んでいくべきか」の部分です。

したがって、次のような配分が理想的です。

・特に対策に力を入れるべき自然災害を挙げること→地震【2~3割】
・行政はどのように取り組んでいくべきか 【下記の2つ合わせて6~7割】
→ハード面の取り組み
→ソフト面の取り組み
・全体のまとめ【1割程度】

(4)「幹」の内容になる「枝」を箇条書きする
それぞれの「幹」ごとに、どんなことを書いていけばよいかを箇条書きして、「枝」をつくっていきます。

・特に対策に力を入れるべき自然災害を挙げること
→地震対策が重要
→それはなぜか?
→首都直下、南海トラフ地震など大規模な地震の発生が確実視されるから
→これらの地震では、極めて大きな被害想定が出されている
→たとえば、南海トラフでは30万人以上の死者、200兆円以上の被害。対策を取らなければ甚大な被害が出てしまう
→予知に頼るのは限界がある。だから事前の対策が大事

・行政はどのように取り組んでいくべきか
【ハード面の取り組み】
→旧耐震基準で建設された公共施設の耐震補強を進める
→個人の住宅については耐震診断や補強のための費用を助成する
→沿岸部では防潮堤や津波タワーの整備を進める

【ソフト面の取り組み】
→住民の意識を高めることが必要
→例えば、自治会単位で防災講習を開く。防災イベントの開催を通して地震や災害対策への関心を高める
→その他、授業の中での防災教育の強化など

・全体のまとめ
→これらの対策によって行政が地震への備えを強化していくべき

このように、「幹」に書くべきこと、知っていることをどんどん箇条書きしていくのです。下書きでいきなり文章の形にすると、時間がかかる上に、話の順番を入れ替える必要が出てきたときに、やりにくくなります。

(5)話の流れを整理する
材料が揃ったら全体の流れを確認し、不要なものを削除したり、順番を入れ替えたりして、話の流れを整理します。

(6)清書する
読みやすい字を心がけて清書します。

(7)誤字・脱字などをチェックする
書き終わった文章の誤字脱字などをチェックします。

「手書き」にかかる時間の目安を
把握しておこう

答案作成練習の初めの段階では、あまり時間を気にせず、まずはきっちりと答案を仕上げることが大事です。そして、試験が近づいたら、時間配分を考えます。

鉛筆で原稿用紙に書くと、意外に時間がかかるものです。最近は手書きで文字を書くことが少ないため、ぜひ慣れておいてください。自分で時間を計って、どれくらいかかるのか確かめておきましょう。

私の経験からいえば、手書きにかかる時間は、800字で30~35分、1200字で45~50分が目安になるでしょう。

適切な言葉遣いを考えたり、消しゴムで消して書き直したりしていると、これくらいの時間はかかります。これに、最終チェックの時間を5分積んでおいて、残った時間で、問題を読むところから下書きの作成までをやらなければなりません。

試験時間内に絶対書き終えなければならないのですから、下書きに配分していた時間をオーバーしたら、本番ではもう原稿用紙に清書し始めるしかありません。そうならないために、試験日が近くなったら実際に時間を計って書く練習をしておきましょう。

次のページに、上記のプロセスで進めた高評価の解答例を掲載します。