特集「地下経済の深淵」第7回では、振り込め詐欺のビジネスモデルについて、現在、刑務所に服役中の元首謀者に独白してもらった。今回はその続編として、彼が振り込め詐欺に手を染め、逮捕に至るまでの経緯を語ってもらった。(ライター 根本直樹)
欲を出し儲けようとすれば
“グループ”は崩壊する
前回の記事で、私は『「振り込め詐欺集団」は存在しない、実態は「プロジェクト方式」だった!』と、あえて極端な言い方をしたが、実は例外もある。若い半グレ連中や受け子、掛け子の経験者がちょっと詐欺のノウハウをかじった程度で「自分にもできる」と独立するケースだ。
彼らは固定的なメンバーによる文字通りの「グループ」を形成しがちだ。振り込め詐欺における、最も重要なポイントを理解していないか、ないがしろにしているがゆえに、彼らは上下関係のある「グループ」を作ってしまうのである。
最も重要なポイントとは、一言でいえば「完全分業」である(詳細は前回を参照していただきたい)。「社長」「掛け子」「受け子」は一体ではなく、完全に独立した存在であり、お互いに顔も名前も素性も知らない。携帯のみで連絡を取り合い、カネのやり取りはすべて「暗証番号付きロッカー」で行う。このように徹底的にリアルな接触を避けることでのみ、振り込め詐欺は「ローリスク・ハイリターン」な“ビジネス”となり得るのだ。