陥りがちな思考の罠に迫る「カイゼン!思考力」。今回は、「すっぱい葡萄」を取り上げる。

――問題です

 以下のA君の問題は何か。

 A君は中堅メーカーに勤める若手の営業マン。このたび、会社が国内経営大学院への社費派遣制度を導入したのを知った。1年もしくは2年の間、給与こそ出ないものの、入学金から受講料まで、すべてを会社が負担してくれ、経営学修士(MBAA)を取得できるというものである。1年につき1人という狭き門であったが、社内の若手の間では大きな反響を生みだしていた。

 もともと経営学に興味のあったA君も、ぜひ採用されたいと考えた。1次選抜は課題レポートと上司の推薦、2次選抜は人事部長らが直に面接をするというプロセスである。A君は、会社から課された課題レポートに取り組み、上司に推薦状を書いてもらって会社に申請書を提出した。

 しかし、結果は芳しいものではなかった。あっさりと1次選抜で落とされてしまったのである。最低でも1次選抜は通るはずと思っていたA君は、ショックを受けながらこう考えた。

「まあ、MBAを取ったからといって、転職するつもりもないからな。ただでさえ、日本企業はMBAの使い方が下手だと言われているわけだし、無理してMBAにこだわらなくてもいいか。経営の勉強なら他にもやりようがあるし。自分は自分らしく勉強していこう」