葛飾北斎が病から復活できたのは煮詰めたユズのおかげ?イラスト/びごーじょうじ

 世界で一番有名な日本人画家は誰か? この質問に葛飾北斎と答える人は多いはずだ。88年の生涯で『富嶽三十六景』『北斎漫画』『東海道五十三次』など数多くの作品を残し、日本のみならず世界の画家、なかでもモネ、ドガ、セザンヌ、ゴーギャンといった印象派に大きな影響を与えた。

『葛飾北斎伝』には〈画工北斎は畸人(きじん)なり〉とある。

 〈年九十(筆者注:当時は数え年)にして居を移すこと九十三所。酒を飲まず、煙茶を喫せず。其の技大いに售(う)るる(同:売れるの意)も赤貧洗ふが如く〉

 北斎の引っ越し好きは広く知られているが、酒を飲まず、お茶もたしなまず、タバコも吸わなかった。金銭的に無頓着だったからか、生涯貧乏だったが、江戸時代としてはかなり長生きした。

 好物はそば。毎日、夜になり仕事が終わると2杯、食べたという。その習慣は死ぬまで変わらなかった。もっとも飲食にはあまり興味がなく、性画の方が好きだったそうだ。味がわからない人で、飲み食いはただ空腹をしのぐためという感じだった、と『葛飾北斎伝』にはある。ただ、下戸だった北斎は菓子が好きだったようで、大福餅を贈られて喜んでいたという記述も。