世界経済の牽引役となった中国では、不動産バブルや世界不況などを背景にした、景気の失速懸念が募っている。新しいリーダーが決まる2012年以降、経済・金融政策の大きな方針転換が起きるのではないかと見る向きも多い。中国への依存度を高める日本にとって、その行方は気になるところだ。中国経済は本当に減速し続けるのか、だとすればその影響はどれほどのものなのか。中国経済に精通する富士通総研の柯隆(か・りゅう)主席研究員が、2012年の中国経済の行方について、詳しく分析する。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

トップが変わると方針転換は起きるのか?
気になる経済政策の行方と残された課題

――世界経済の牽引役となった中国では、今年新しいリーダーが決まり、来年3月の全人代(全国人民代表大会)を経て、新しい国家主席が率いる新体制が本格始動する。中国への依存度を高める日本経済にとって、新しい中国の行方は気になるところだ。指導者交代に伴い、中国の経済政策に変化は生じるだろうか。

か・りゅう/富士通総研 経済研究所主席研究員。1963年生まれ。中国南京市出身。南京金陵科技大学卒、愛知大学法経学部卒、名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。長銀総合研究所を経て98年富士通総研経済研究所に入所、2007年より現職。著書に『中国の不良債権問題』『中国の統治能力』『中国に出るか座して淘汰を待つか!』『最新中国経済入門』(共著)など。

 新指導部への引き継ぎ期間に当たる2012年には、経済政策の大きな方針転換は起こらない。現指導部の残り任期期間が少なく、大胆な政策転換ができないからだ。

 どの国の政治家も、自分に再選の見込みがない場合、残り期間を慎重に過ごそうとする傾向がある。胡錦濤国家主席と温家宝首相は、よほどのことがない限り、これまでの路線を続けていくはずだ。

 また、2013年に新しい指導部が発足しても、不確実性が高まるなかで現状路線が大きく変わることはないだろう。今後ポイントになるのは、経済政策よりもむしろ制度改革のほうだ。

 温家宝首相が経済政策を主導してきたこれまでの8年間は、制度改革をほとんど何もやってこなかったため、金利の自由化や為替レジームの柔軟化など、金融制度の改革が遅れ、国営企業の民主化も進まなかった。残された課題は大きい。

 政策だけの手当てはもう限界に来ており、今後は政策をやりながら制度改革を断行していかなくてはならない。新政権にとっては、それが最も重要な課題の1つとなる。