コーポレートガバナンスについては、その定義、制度、論点などについて、連載第15回で包括的に解説したが、その後の昨年12月7日に、法務大臣の諮問機関である法制審議会・会社法制部会が「会社法制の見直しに関する中間試案」(以下「試案」)を公表した。この試案を基に、早ければ今年中にも、会社法の一部改正が国会で審議される可能性がある。
コーポレートガバナンスの強化については、以前から各方面で議論がなされていたとはいえ、やはり昨年の大王製紙・オリンパス問題を契機にして、本試案の提出が早まったと見て差し支えなかろう。そこで、今回は、その試案の主要なポイントを抽出し、果たしてそれが日本のコーポレートガバナンスの強化に役立つのかどうかについて、法学者ではなく、企業金融に携わる者としての見地から検討してみることにしたい。
なお、連載第15回でも指摘したが、経済界、特に経団連は、社外取締役の義務化など、ガバナンス強化の制度化に従来から強硬に反対しており、その姿勢は大王製紙やオリンパスの問題が明るみに出てからも全く変っていない。皮肉なことだが、こうした抵抗勢力が抵抗を続ければ続けるほど、日本の病理が浮き彫りになってくるものである。
民主党の「資本市場・企業統治改革ワーキングチーム」の座長である大久保勉参議院議員は、「経団連が嫌がることは経営者以外の人にとってよいことだとも考えられる」(1月16日付日本経済新聞)とコメントしているが、筆者も同感である。しかし、今回の試案は、こうした抵抗勢力の意見に抗うことができず、既に相当程度の譲歩をした案になっているという印象を受ける。今回の試案についてのコメントは以下の通りだが、本来であれば今回の試案の域に留まらず、もっと抜本的な変革が必要だというのが筆者の意見である。