大王製紙では、井川意高前会長による子会社からの100億円超の借入が特別背任に問われつつある。また、オリンパスでは、高額で買収した国内3社の減損処理や、英医療機器メーカー買収に際して助言会社に巨額の報酬を払っていたが、実は過去の有価証券投資に伴う損失を補てんするために行なわれたことが明るみに出た。
大王製紙では、子会社の取締役会が機能せず、親会社の取締役会でもこの問題が取り上げられた形跡がない。オリンパスでも、これだけ重要な一連の取引に、取締役会や監査役のチェック機能が働いたとは思えない。
産業金融のあり方を考える上で避けて通れないのが、コーポレートガバナンス論である。日本では「株主をはじめとするステークホルダーの利益を守るため」としてコーポレートガバナンスの見直しが叫ばれて久しく、実際に社外役員の導入なども進んでいる。にもかかわらず、これらの会社では、取締役会や監査役会が有効に機能しなかったことになる。
そもそも、こうした事態に至る伏線として指摘したいのは、日本の旧い企業の実に多くが、米国型の株主利益重視のガバナンス体制に、露骨に抵抗する姿勢を崩していないことである。筆者は米国型のガバナンスが最善と考えているわけではないが、メインバンク制度と株式持ち合いをベースにした日本独自の「もたれ合い」的なガバナンス制度の疲弊が、長年に亘る日本の経済停滞の一つの要因であることは、そろそろコンセンサスにすべき時期なのではないだろうか。
株主・投資家の立場から見た
コーポレートガバナンス論
(1)コーポレートガバナンスとは
「コーポレートガバナンス(企業統治)」とは、企業が社会倫理を守りつつ、利害関係者(ステークホルダー)に対して、その企業価値を最大化するための枠組みのことである。