黒田総裁続投で日銀の財務悪化に拍車、出口戦略は遠のく

 日本銀行の財務体質悪化に拍車が掛かりそうだ。3月に任期満了を迎える黒田東彦・日銀総裁が続投する見通しとなった。安倍晋三首相にとってアベノミクスを体現してきた黒田総裁を代える選択肢はなかった。

 黒田総裁は5年前、マネタリーベース(日銀券発行残高、貨幣流通高と銀行が日銀に預ける日銀当座預金の合計)を2年で2倍にし、2%の物価上昇率を実現すると断言し、国債の大量購入を軸とする異次元緩和を開始した。

 さらに、2014年10月の追加緩和での国債購入額、ETF(上場投資信託)購入額の拡大、16年1月のマイナス金利、同年9月の長短金利操作導入など新たな金融緩和策を繰り出してきた。

 しかし、就任後約5年たった現在に至るまで、14年4月の消費税引き上げの影響を除けば、消費者物価上昇率が2%に達したことは一度たりともない。目標達成の時期の見通しは、何度も先送りされ、現在は19年度だ。