当時の小平は日本ではトップの実力を持っていたが、国際大会ではまだ無名。また、活躍したとしても、業種が病院ではメリットは少ない。受け入れを決めたのは理事長の「地元の選手を応援したい」という心意気だけだった。だが、副産物はあった。小平は2010年のバンクーバー五輪女子チームパシュートで銀メダルを獲得したが、帰国後、病棟をまわって入院患者にメダルを見せ、応援の感謝をしたという。それが患者を元気づけることになったそうだ。

 世界と戦えるレベルになった小平には、スケート部を持つ企業からの勧誘もあったようだが、相澤病院の恩に報いることを選び、病院側もレベルアップのためのオランダ留学に送り出すなど、できる限りの支援をした。そして9年が経ち、小平は500mで金、1000mで銀のふたつのメダルを獲得する偉業を成し遂げたのだ。

 当然、メディアは金メダリストの所属先が大企業ではなく地方都市の病院ということで注目し、支援のいきさつを紹介。相澤病院の小平を受け入れる英断がなければ金メダル獲得の快挙はなかったかもしれないわけで、世間は病院の姿勢を絶賛したわけだ。

 今回の日本選手団にはもうひとり病院所属の選手がいる。アルペン競技の女子大回転に出場した石川晴菜(23)だ。この選手も苦労して競技を続けてきた。高校2年時にはインターハイで回転と大回転の2冠を達成した逸材だが、スキー部のある企業には受け入れてもらえず、地元石川県の会社に就職した。しかし仕事と競技の両立が難しかったため退職。支援者が「崖っぷち募金」と名づけた募金活動を行いなんとか競技を続けた。才能を買っていた石川県スキー連盟も就職先探しに尽力し、それに応えたのが金沢市にある木島病院。2016年から病院の受付事務の仕事をしながら、トレーニングに励み五輪代表の座を得た。アルペン競技はヨーロッパ勢との実力差が大きく今大会は33位に終ったため、小平のように注目されることはなかったが、地味な冬季競技には同様の苦労をしている選手はたくさんいるし、見返りを求めず支援している企業などもあるのだ。

アスリートを熱烈支援!
「木下グループ」とは?

 こうした例とは色あいが異なるが、今回の五輪で急に存在感を増した選手の所属先がある。住宅メーカーの木下工務店などを傘下に持つ木下グループだ。今大会には6人の所属選手が出場した。スノーボード男子ハーフパイプで王者ショーン・ホワイトと金メダル争いをし惜しくも銀メダルに終わった平野歩夢、フィギュアスケート女子シングルの宮原知子、ペアの木原龍一と須崎海羽、アイスダンスのクリス・リードと村元哉中だ。