生活保護を利用していてもいなくても、あらゆる人々の生活の最低ラインが、生活保護法と生活保護基準に守られている。その土台を破壊しかねない“地雷”が、今回の生活保護法改正案で現実になりかねない「不正受給ではない生活保護費の受け取りすぎも、税金の徴収と同様に取り返してよい」という規定なのだ。言い換えれば、「何かちょっと下手をしたら、生活保護以下になりかねない」ということだ。

 これがもしも現実となったら、生活保護の「最後のセーフティネット」機能は事実上骨抜きにされ、「最後のセーフティネットのない国」という既成事実が積み上がってしまうだろう。

これからの日本の姿は
「国民から惜しみなく奪う」?

 この問題を、法律家はどう見るだろうか。生活保護制度に詳しい弁護士の小久保哲郎氏は、こう語る。

「これは63条返還を、78条返還と同じように非免責債権にするということですね」

 生活保護法の63条は保護費の単純な受け取りすぎ、同じく78条は不正受給による受け取りすぎの取り扱いを規定している。これらが同様に「非免責債権」になるということは、「不正であろうがなかろうが同じ」ということだ。味噌もクソも一緒にするのなら、政府のモラルハザードではないだろうか。

 さらなる問題は、「受け取りすぎ」であるかどうかを判断するのは行政であるということだ。生活保護法の63条が適用され得る場面は、犯罪被害を受けた場合の賠償金・障害年金の遡及支給など数多い。「受け取りすぎ」とみなされれば、収入認定(召し上げ)の対象となる。

 とはいえ、「受け取りすぎの保護費は、とにかく全額返還」という取り扱いがなされると、数多くの問題が起こる。たとえば、福祉事務所の手違いで少しだけ多く給付されていた保護費を、5年後に「5年分まとめて返還を」と求められると、本人は困ってしまうだろう。もちろん、現在の生活保護制度は「自立更生費」を認めており、たとえば義援金からは「自立更生費」分が本人の手元に残ることとなっている。しかし実際には、「自立更生費の控除を検討する必要性を福祉事務所の職員が知らなかった」など数多くの理由と背景によって、「揉めどころ」となる。