記録的な猛暑となっている2016年夏は、単に気温が高いだけではなく、過去に類例のない高温・多湿・豪雨・台風などによる問題が相次いている。生活保護制度が想定していない事態のもと、生活保護の暮らしは、今、どうなっているだろうか?
酷暑の夏、生活保護で暮らす人々は?
2016年夏は、厳しい暑さとなっている。
東京の最高気温が37.7℃(東京都東京)となった8月9日、アメダスで気温を計測している全国約930地点のうち198地点で、最高気温が35℃を超える「猛暑日」となった。この日、多くの友人知人が「外にいるだけで体力を消耗するだけではなく、判断力が奪われていく感じがする」と語っていた。
しかし、同じように猛暑であっても、その影響は一人一人異なる。まず、基礎体力・暑さへの馴れ・体調の異常に早期に気づくことができるかどうかといった個人的問題による違いがある。それに加え、どこか涼しい場所に逃げ込んで涼を取ることができるのか・そもそも猛暑から逃げて行く場所があるのか・就寝する時だけでも快適な環境で安眠できるのかといった数多くのことがらが、無事に酷暑をしのげるかどうかを左右する。「住まいにエアコンがあり、使用できる」ならば、それだけで消耗はかなり防げるはずだ。
では、原則としてエアコンを新規に購入する経済力がなく、またエアコンがあっても電気代が心配で使いにくい生活保護世帯の人々にとって、この夏はどのようなものであろうか?
今回は、生活保護で暮らす千葉県の50代男性・北海道の40代女性の2人が語る「酷暑の2016年夏」を紹介し、最後に「生活保護でエアコンは持てるのかどうか」についての現状を述べる。
暑さをしのぐのは「扇風機」だけ
睡眠障害に追い打ちをかける熱帯夜
まず、千葉県の馬場寿一さん(54歳)の毎日を紹介する。
精神障害をもつ馬場さんは、もともとは4人家族であったが、家族が他界したり施設入居を余儀なくされたりした結果、現在は単身生活だ。経緯は、本連載でも何回か記事化させていただいた(https://diamond.jp/articles/-/93191ほか)。
馬場さんに電話してみたところ、
「今日は調子よくないです。頭が、脳が働いていない感じです」
という。発音は、ふだんよりも不明瞭だった。向精神薬の副作用かと思って聞いてみたところ、薬の内容や量は以前と変わりないそうだ。しかも、馬場さんの住まいから最寄りのアメダス観測地点の気温データを見てみると、最高でも30℃を少し超える程度。室温は「30℃くらい」ということだった。馬場さんの住まいは、鉄筋コンクリート5階建ての県営住宅の1階で、南向きでも西向きでもない。住まいが極度に暑くなりやすかったり、逆に涼しくなりにくかったりするというわけではない。しかし、最高気温が13時に35℃となった日には、やや遅れて15時ごろ、室温も35℃程度になるようだ。
「今日は曇っているので、気温はそうでもないのですが、湿度が高くて蒸し蒸しします。じっとしていても、汗ばんできます。扇風機はあるので動かしています。扇風機の風がなければ、やってられません」(馬場さん)