あの女子高生はいま?
奪われた学園生活と希望
2014年4月、福島市の生活保護母子世帯で育つ高校1年生の少女が、自らの努力によって獲得した給付型奨学金の全額を収入認定(召し上げ)された。約1年半後の2015年8月、厚労省は福島市の決定を不当とする厚労大臣裁決を下した。さらに給付型奨学金およびアルバイト収入を塾代などに充当することを認める通知を発行し、用途の制限を緩和した。
少女はその後、夢へ向かって歩みつづけているのだろうか。
2017年7月、私は2年ぶりに彼女・アスカさん(18)と対面した。
2015年のアスカさんはシャープなイメージを漂わせ、ハキハキとした口調でこれまでの歩みと将来の希望を語る、建築家志望の聡明な高校2年生だった。そのときすでに、高校生活の困難から、アスカさんは大学進学を断念していたが、建築家への次の歩みとなる就職のために努力し続けていた。
目の前のアスカさんの顔立ちや表情からは、2年分の成長が感じられる。しかし2年前の明るさは全くない。大学進学を断念し、夢に近づく就職も断念したアスカさんは、結局は入学した高校での学校生活と卒業まで断念することになり、現在は通信制高校に在学している。また精神的な健康も失われ、心療内科で治療を受けている。
アスカさんのかつての高校の同級生たちは、この3月に卒業し、今は大学進学など次のステップに進んでいる。
アスカさんに何が起こったのかを理解するためには、アスカさんと母・ミサトさんのこれまでの歩みを知ることが、どうしても必要だ。やや長くなるが、その経緯を紹介したい。