不況の出口が見えないなか、かつて盛り上がったITベンチャーの起業熱は、萎んでしまったかに見える。一方、シリコンバレーを中心に世界のIT業界の動きはスピードを増している。このままでは、日本のIT企業はグローバル競争で勝ち抜くことができなくなるかもしれない。かつて日本オラクルの代表を務め、現在は株式会社サンブリッジおよび株式会社サンブリッジ グローバルベンチャーズの代表取締役会長兼CEOを務めるアレン・マイナー氏は、世界有数のベンチャーキャピタリストとして、日本のITベンチャー企業の投資・育成に情熱を注いでいる。日本発のグローバル企業はなぜ生まれないのか。それを育てるためにはどうしたらいいのか。マイナー氏が力説する。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
日本発のグローバルベンチャーを!
サンブリッジの投資・育成スキーム
――現在は、サンブリッジグループの会長を務めている。サンブリッジはITソリューション事業、サンブリッジ グローバルベンチャーズは、日本のITベンチャーに投資し、育成する「グローバルベンチャーハビタット事業」に力を入れていると聞く。これはどんなビジネスなのか。
私はこれまで、セールス・フォース・ドットコム、アイティメディア、オウケイウェイブ、ガイアックスなどに投資してきた。業界関係者による投資育成活動や、日本政府に対する規制緩和の提言など、日本発のグローバル・ベンチャーを育成しようとしてきた。
現在、サンブリッジ グローバルベンチャーズが行なうグローバルベンチャーハビタット事業は、こうした私の思想を体現する事業で、2000年にスタートさせた。IT企業の本場であるシリコンバレーと日本の東京・大阪をつなぎ、現地のエコシステムを日本へ導入する一方、日本のベンチャーに対してグローバル展開支援を行なうことを理念としている。
具体的には、将来有望なベンチャー企業に対して、シード期(事業立ち上げ期)から事業拡大期における海外展開までの投資・育成を行なう。日本のベンチャーは、成長を実現するためにIPO(新規上場)を優先しがちだが、我々はIPOよりも先に、事業基盤をしっかり確立し、海外展開を目指すスキームを提案する。