
国際情勢が不安定さを増す昨今ですが、資金力のある富裕層は複数拠点を持つことに積極的です。一方で、各国の制度や市場の変化に伴い、“人気の移住先”も変わっています。多くの富裕層の海外移住を支援してきた専門家が、最新の移住トレンドを解説します。(構成/ダイヤモンド・ライフ編集部)
富裕層の人気移住先
序列に変化が生じているワケ
海外移住と聞いて、どのような印象をお持ちでしょうか。「移り住む」という言葉の通り、新たな拠点に移動するイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、富裕層の移住は、どこか1カ所に住み移るという感覚とは少し異なります。彼らは、「人生の選択肢を増やす」ために、住む場所も複数の選択を確保しておこうと考えるのです。
今回は、これまで数多くの富裕層の方々の海外移住をサポートしてきた経験を踏まえ、彼らが何を重視し、どのような国を選んでいるのか、その実情をお伝えしたいと思います。
富裕層から移住先として近年、特に人気だったのが、ポルトガル、シンガポール、ドバイの3カ国でした。
シンガポールは国外の所得に課税されない、ドバイはそもそも所得税がないなどの税制面でメリットがあり、ポルトガルに関しては、およそ5000万円の不動産の購入により投資家ビザ(ゴールデンビザ)を取得することができ、さらに5年後には永住権の申請もできるということで注目されていました。
ただ、足元ではこの序列に変化が見られています。
ビザ取得のハードルが低いことで人気だったポルトガルでは、世界中から富裕層マネーが殺到し、不動産価格が上昇してしまったことを背景に、2023年に不動産購入によるビザ取得の制度が廃止されました。
ドバイやシンガポールでは税制面でのメリットは引き続きあるものの、特にドバイでは物価や住居費が高騰しており、移住先としての魅力は減少しています。シンガポールについても、徐々にビザ取得の条件が厳しくなってきている状況です。